白内障手術前後のスキンケアや化粧と日常生活の注意点

<資格>
医学博士
日本眼科学会専門医

<経歴>
2003年:近畿大学医学部 卒、近畿大学医学部眼科学教室 入局
2009年:府中病院 眼科、近畿大学医学部大学院医学研究科 卒
2011年:Brien Holden Vision Institute Visiting Research Fellow
2012年:近畿大学医学部 助教
2014年:近畿大学医学部 医学部講師
2016年:医療法人翔洋会 理事長 平木眼科 院長
2018年:南大阪アイクリニック 院長

白内障は、50代で40~50%、60代で70~80%、70代で80~90%、80歳以上ではほぼ100%が発症するといわれている目の病気で、手術を受ける方もたくさんいます。そこで、南大阪アイクリニック院長の渡邊 敬三先生から手術後のスキンケアや化粧(メイク)、日常生活の注意についてアドバイスをいただきます。
その前に、白内障の症状や原因、治療についても触れます。

白内障とは?

白内障とは、加齢や紫外線ダメージの蓄積などの原因で、目の水晶体が濁ってしまう病気です。
水晶体は、カメラのレンズのように、目に映し出される風景のピント調整の役割を担っています。
健康な目では調整機能が正しくはたらきますが、白内障になるとピントの調整機能が悪化します。

<正常な目と白内障の目>

正常な目と白内障の目
[提供]白内障LAB

白内障では、次のような症状が現れます。

<白内障の症状>
  • 風景がぼやけて見える
  • 明るい場所と暗い部屋や夜間で見え方がちがう
  • 光源(ヘッドライトや照明)が弾けるように見える
  • ものや人が二重・三重に見えるようになる
  • 何度メガネを変えても、すぐに合わなくなる
  • 左目と右目で見え方が異なるときがある

白内障の原因

白内障の主な原因は加齢です。
年齢を重ねるほど罹患率は高くなり、80歳以上ではほぼ100%が発症します。
一方、20代〜30代で白内障を発症することもあります。

白内障の原因
[提供]白内障LAB

その場合の原因としては、次のようなものが考えられています。

  • アトピー性皮膚炎
  • 外傷
  • 薬剤
  • 糖尿病
  • 紫外線
<参考記事>

白内障の治療

白内障の治療方法は、点眼治療と手術があります。
点眼治療は進行を遅らせるもので、根本的な治療は手術です。

1)点眼治療

点眼治療は、白内障の初期で日常生活に影響がない場合に行われます。
主に、ピレノキシン製剤やグルタチオン製剤を用いて水晶体が濁る速度を抑え白内障の進行を遅くします。極初期の白内障には有効との報告はありますが、点眼の進行予防効果は限定的と考えて頂くと良いでしょう。

製剤名 特徴
ピレノキシン製剤 白内障の起因となるキノイド物質の成長を抑え、水晶体が混濁化するのを防ぐはたらきがある。
グルタチオン製剤 白内障の進行にともない減少するグルタチオン量の不足分を補う抗酸化物質で、水晶体の透明性を保つはたらきがある。

ただし、点眼治療で水晶体を透明に戻すことはできないため、根本的な改善のためには、手術による治療が必要となります。

2)手術

白内障が日常生活に支障が出てくるほど進行した場合は、手術による治療が必要です。
現在では、白内障の手術にはさまざまな種類がありますが、いずれも所要時間は10~20分ほどと短時間で、ほとんど痛みもない侵襲の少ない治療です。
広く行われているのは、超音波水晶体乳化吸引術という手術です。
この手術は、角膜を切開した後に超音波器機を用いて濁った水晶体の核を砕き、それを吸い取ったあとに眼内レンズと入れ替える治療です。

<白内障の手術>

白内障の手術
[提供]白内障LAB

また、レーザーによる白内障手術は、最先端技術として著しい進化を遂げています。 個々の目に応じてレーザーの照射位置を決め、角膜切開・前嚢切開・水晶体分割を行うことで、より正確で再現性の高い手術が可能になっています。

白内障の治療は、点眼薬か手術のどちらを選べば良いのか、また手術の方法の選択については、眼科を受診して医師と相談して決めましょう。

白内障手術前後のスキンケアや化粧(メイク)

白内障手術前後のスキンケアや化粧(メイク)などについて解説します。
いずれも目安なので詳しくは主治医に相談しましょう。

1)白内障手術前後のスキンケアの注意

白内障の手術当日の朝には、化粧水も含め使用せず、洗顔するだけにしましょう。これは手術の際の消毒薬を弾いてしまいまったり、ふき取りが難しいばあいがあるからです。そのため、手術前は、油分を含んだ美容液や乳液、保湿クリームなどを顔に使うのは控えましょう。
また、白内障手術の後は、手術当日から化粧水をつけることができますが、眼に入らないように注意しましょう。
また、乳液やクリームなどの肌に残るものは、目に入るリスクがあるので控えましょう。

2)手術後の洗顔

白内障の手術後、当日は硬く絞ったタオルで周囲を拭くだけなら大丈夫です。
しかし、洗顔料を使うのは控えましょう。
術後3日目~術後1週間目からは、通常の洗顔が可能です。
医師に確認し洗顔の許可がでたら、眼球を強く圧迫しないよう注意して洗顔を行ってください。

3)手術後の洗髪

洗髪は、目に水が入らないようにおこなえる場合は翌日から可能です。難しい場合には洗顔と同じく術後3日目~1週間程度で可能です。
手術後1週間までは、なるべく洗髪の際はシャンプーや水などが目に入らないように注意しましょう。

4)手術後のメイク

お化粧が可能となる時期は、手術後1週間が目安です。
ファンデーションを塗る場合は、目や目元には触れずに、周囲の肌に塗るように注意しましょう。
ただし、それ以降も睫毛より内側にアイラインを引くことは控えてください。
その後、経過が順調であれば、1週間後から手術前同様のお化粧が可能となります。

5)白内障手術後のパーマや毛染め

毛染めやパーマは、使用する薬剤が目に刺激を与えるリスクがあるため、約1週間は控えましょう。

白内障手術後の日常生活の注意

ここでは白内障手術後の日常生活の注意を紹介します。
いずれも目安なので詳しくは主治医に相談しましょう。

1)手術後の入浴・温泉

白内障の手術当日は、首から下のシャワーだけにとどめましょう。
入浴は、目に水や汗が入ったり、目の炎症を悪化させたり、血圧を上昇させるリスクがあります。湯船につかるのは、手術後1週間後をめどにしましょう。
また、温泉や大衆浴場の利用も、2週間~1カ月は控えてください。
旅行に関しては、近場で短期であれば手術後1週間から可能ですが、遠距離(特に海外)旅行は1カ月ほど避けたほうが無難です。

2)手術後の仕事や家事

家事や軽作業であれば翌日から無理のない範囲で可能です。
事務仕事であれば翌日~3日後くらいが復帰の目安です。
活動量の多い営業など仕事は、術後1週間経ってからの復帰が目安です。
重たい荷物を運ぶなど負荷が大きな仕事は2~4週間後からの復帰が一般的です。
なお、埃や粉じんなどがある場所での作業は、目を保護メガネなどでガードしてあらかじめ対策してください。

3)手術後の運動

散歩程度の運動は、手術の翌日より可能ですが、1週間程度は最低限にとどめると良いでしょう。
軽く汗をかく程度の運動は手術後1週間、筋トレやランニングなどは2~4週間後からが目安です。
また、ゴルフや野球、テニスなどのスポーツは、目安として1か月後より可能です。
水泳も1か月後より可能ですが、必ずゴーグルを使用しましょう。

4)手術後の車の運転

白内障の手術直後の車の運転は、視力が安定していると医師が確認するまで原則として禁止です。
車の運転開始は、手術後1週間ほど目を保護する眼帯(または保護メガネ)が取れるタイミングか、医師の許可を待って行ってください。
また、車の運転は、手術の前後では見え方が変わっているため、最初は近場への短時間から始め、徐々に慣らしましょう。

5)手術後の飲酒

白内障の手術後の飲酒は、目の傷口の炎症を悪化させるリスクがあります。原則として、手術後1週間ほどは控えましょう。

白内障の予防は美肌につながる

白内障にはいくつかの予防の対策があります。
それらの多くは、体全体の健康や健やかな美肌のためにも良いことです。
それほど難しいことではありませんので、ぜひ、実践しましょう。

1)目の紫外線対策

白内障は紫外選による活性酸素によって、水晶体に含まれているたんぱく質が酸化し性質が変化してしまうことによって起こります。
そのため、目の紫外線対策が白内障予防の対策になります。
UVカット機能付きのサングラスやつばの広い帽子の着用などで目の紫外線対策を行いましょう。
UVカット機能付きのサングラスは、紫外線吸収型のレンズがおすすめです。

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<参考記事>

2)喫煙習慣を持たない

タバコに含まれるニコチンは、毛細血管を収縮させ血流障害を起こしたり、ビタミンCを破壊します。そのため、喫煙は白内障のリスクと考えられています。実際、厚生科学研究費補助金 21世紀型医療開拓推進研究事業「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」にて、喫煙が白内障発生リスクを上昇させると発表されています。
同時に、本研究では禁煙は発症リスクを下げることが発表されています。
喫煙習慣を持たない方はそれを継続し、ある方は禁煙をすることで白内障の予防の対策になります。

<参考記事>

3)酸化を防ぐ栄養素を摂る

酸化を防ぐ栄養素を含む食べ物を積極的に摂ることは、白内障の予防の対策になります。
酸化を防ぐ栄養素とそれらを含む食べ物を表で示します。

栄養素 食べ物の種類
ビタミンC パプリカ、パセリ、ブロッコリー、青菜類など
キウイフルーツ、いちご、かんきつ類など
ビタミンE ひまわり油、やし油、べに花油など
ごま、アーモンド、ピーナッツなど
ベータカロチン
ルテイン
にんじんやほうれん草、ピーマン、パプリカ、かぼちゃなど
ゼアキサンチン ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜やとうもろこし、柿、オレンジジュースなど
そのほかのポリフェノール プルーン、りんご、赤ワイン、コーヒー、緑茶、紅茶など
ミネラル わかめ、のり、昆布など
桜えび、うるめいわしなど
納豆など

4)バランスの良い食生活

糖尿病は白内障の原因の一つです。糖尿病は、偏った食事や運動不足などが原因で、血糖値の上昇が続くことによって起こります。
そのため、糖尿病を予防することが、白内障の予防の対策となります。
1日3食、バランスの良い食事を心がけましょう。また、ファストフードやスナック菓子など、糖化の原因となるAGEs(最終糖化産物)を多く含む食べ物を控えめにすることも大切です。

<参考記事>

5)適度な運動習慣

運動によって体や眼周辺の血流が改善されるため、糖尿病の予防や白内障の予防につながります。
運動する場合は無理をしないことを前提として、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を心地よいと感じられるレベルで習慣化しましょう。

まとめ

白内障の手術後のスキンケアや化粧(メイク)、日常生活などの注意点を中心にご紹介しました。
また、白内障の症状や原因、治療法や予防法に関してもあわせて紹介しました。
白内障は加齢が主な原因であり、高齢になると多くの方がかかる目の病気です。
しかし、予防法はありますし、同時に健康や美肌、エイジングケアの対策になるので、ぜひ、実践しましょう。
白内障は、残念ながら手術せざるを得なくなっても、侵襲は少ないため、それほど心配はいりません。
ただし、術後は医師の指示に従って、適切な日常生活やケアを行いましょう。

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