シミ予防の日焼け止め!ケミカルとノンケミカルおすすめはどっち?

■経歴
平成9年 筑波大学医学部卒業
同年東京女子医科大学形成外科学教室入局
平成10年5月 都立府中病院形成外科非常勤医師
平成10年11月 東京女子医科大学形成外科研修医
平成11年4月 東京大学形成外科医員
平成11年10月 東京女子医科大学形成外科助手
平成12年5月 都立府中病院外科非常勤医師
平成14年5月 東京女子医科大学形成外科助手
平成14年10月 日本大学板橋病院形成外科
開設2年目の準オープニングスタッフとして赴任。美容医療外来を開設。
平成17年6月 米国テキサス大学留学
麻酔科学教室にて全身熱傷の全身管理についての研究

紫外線によるダメージは、メラニンが過剰につくられることからシミの原因となります。
そのため、シミの予防には紫外線対策が大切です。
また、紫外線対策は、シワやたるみなどのエイジングサインの予防にもつながります。

<シミ・ソバカスができるメカニズム>
シミ・ソバカスができるメカニズムのイラスト

そんな紫外線対策に使うアイテムが日焼け止めです。 シミ対策ほか、エイジングケアを意識している多くの方は、この点についてはご存知だと思います。
実はそんな日焼け止めには、ノンケミカルとケミカルの2種があり、それぞれ特徴があります。また、メリットとデメリットがあります。
そこで、この記事では、ノンケミカルとケミカルの日焼け止めのそれぞれの特徴や違い、メリット・デメリットをご紹介します。
また、紫外線吸収剤のリスクにまつわるトピックスについてもご紹介します。

<参考記事>

日焼け止めは大きく2種類

紫外線から肌を守るには、紫外線が肌の奥へと侵入する前にブロックすることが大切です。
それを肌に塗ることで可能にする化粧品が日焼け止めです。

そんな日焼け止めの成分には、紫外線散乱剤と紫外線吸収剤の2種類があります。
紫外線散乱剤は、紫外線を反射させることにより、紫外線が皮膚に入るのをブロックします。
紫外線吸収剤は、紫外線を皮膚の表面で吸収し、熱エネルギーなどに変えて放出することで紫外線をブロックします。
このように、同じ日焼け止めであっても、メカニズムの異なる2種の成分があるのです。

化粧品業界では、日焼け止め成分として紫外線散乱剤だけを配合したものをノンケミカル(処方)の日焼け止めと呼びます。
一方、少しでも紫外線吸収剤が入っていればケミカルの日焼け止めと呼びます。

これらのうち、乳児期タイプや幼少児期タイプのアトピー性皮膚炎は、未熟だったバリア機能が成熟するにつれて、改善する傾向にあります。

ケミカルとノンケミカルの違い

一般的に、ケミカルとは英語のchemical(化学物質)のことです。一方、ノンケミカルは化学物質を含まないものを指します。

紫外線散乱剤も紫外線吸収剤も、本来は「ケミカル」なのですが、なぜか慣習的にこの分類がなされて、今に至っているのです。

では、ノンケミカルとケミカルで日焼け止めの特徴はどう異なるのでしょうか。
また、それぞれのメリットとデメリットは、何でしょうか?

<参考記事>

ノンケミカルの日焼け止めのメリットとデメリット

1)ノンケミカルの日焼け止め成分の種類

ノンケミカルの日焼け止め

ノンケミカルの日焼け止めの成分、つまり紫外線散乱剤は、肌の上に皮膜をつくって紫外線を跳ね返す反射によって、皮膚へ紫外線が入るのを防ぎます。

2)酸化亜鉛と酸化チタンが主な成分で、どちらも白色の粉末です。メリットとデメリット

①メリット

メリット 説明
肌への負担が少ない ・紫外線を反射させるため、熱や刺激が小さい
・乾燥肌、混合肌、敏感肌でも使いやすい
効果が長持ち ・紫外線吸収剤と違って化学変化(光劣化)がなく、汗で落ちたりタオルで拭ったりしない限り塗り直しが不要
・ウォータープルーフの日焼け止めの主流
幅広い波長に対応 UVB~UVAと幅広い波長の紫外線に対応できるため、紫外線ブロック範囲が広い

②デメリット

デメリット 説明
使用感が良くない ・白色の粉末なので配合量を増やすと白浮きする
・色むらやベタつきなど、使用感が悪い場合がある
紫外線ブロック力が弱い場合がある 紫外線吸収剤と比べると紫外線防御効果が低くなる
<参考記事>

ケミカルの日焼け止めのメリットとデメリット

1)ケミカルの日焼け止め成分の種類

ケミカルの日焼け止めの成分、つまり紫外線吸収剤は、肌の表面で紫外線を吸収した後、化学的にエネルギーに変えて放出するものです。

紫外線吸収剤としては、オキシベンゾン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オクチノキサート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンがあります。
また、最近開発されたテレフタリリデンジカンフルスルホン酸は、波長の長いロングUVAにも対応可能な紫外線吸収剤です。

2)メリットとデメリット

①メリット

メリット 説明
紫外線ブロック力が高い ・UVBのような強い紫外線を防ぐ力が強い
・レジャーやスポーツなどさまざまなシーンに使える
使い心地が良い ・きしみがなく、なめらかな使い心地
・無色透明で白浮きする心配がない
・ムラなく塗り拡げることができる
長い波長に対応 波長の長いロングUVAへの効果が期待できる

②デメリット

デメリット 説明
肌への負担が大きい ・肌への負担が大きく、インナードライ肌や敏感肌でバリア機能が低下している場合には注意が必要
・吸収した紫外線を熱エネルギーとして放出する際に、肌の水分を奪うリスクがある
時間とともに効果が下がる 光に当たると分解が進み、時間の経過とともに劣化するため、紫外線ブロック力が下がりやすい
<参考記事>

ノンケミカルとケミカルではどっちがおすすめ?

ノンケミカルとケミカルの日焼け止めのそれぞれの特徴やメリット・デメリットを解説しました。
はたして、どちらがおすすめでしょうか。

結論としては、肌に合っていてそれぞれの季節やシーンに合った使い方をすれば、どちらを選んでも構いません。

<日焼け止めの生活シーン別の選び方(SPFとPA)>
生活シーンと日焼け止めの選び方

また、ノンケミカルとケミカルの日焼け止めは、どちらも進化しています。

たとえば、ノンケミカルの日焼け止めは、配合の調整や技術開発により、白くなりにくいだけでなく、高いSPF値を出せるようになってきています。

一方、ケミカルの日焼け止めは、肌への負担が大きいというデメリットを解消するために、吸収剤をカプセルに閉じ込めているものも登場しています。

このように、いずれも技術の進化でデメリットを解消しつつあるのです。

こうした理由から、単純にノンケミカルとケミカルの日焼け止めでどちらがおすすめとはいえなくなっています。

ノンケミカルであってもケミカルであっても、自分の肌に合うものを上手に選ぶことが大切です。

ただし、ノンケミカルが向く方やケミカルが向く方という視点で分けることは可能です。

ノンケミカルがおすすめの方 ・敏感肌など肌が弱い方
・40代以上の方
・美容医療の施術後
ケミカルがおすすめの方 ・肌が比較的強い方
・とにかく白浮きは嫌な方
・頭皮やボディの紫外線対策

こうした条件の中で、特に美容医療の後は、ノンケミカルの日焼け止めがおすすめです。
シミ取りレーザーをはじめ、今では多くの美容医療の施術があります。
施術後はバリア機能が低下していることが多く、美容医療の効果を十分に発揮させたり、ダウンタイムを長引かせないためには、必ず紫外線対策が必要です。
ただし、できるだけ刺激がないほうがベターです。
その点では、美容医療の施術後の日焼け止めは、ノンケミカルの日焼け止めがおすすめです。

<参考記事>

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どんな日焼け止めも適量を正しく使うことが大切

ノンケミカルとケミカルの日焼け止めのどちらを使う場合も、紫外線をしっかりカットするためには、適正量を使うことと塗り直しが大切です。

1)日焼け止めの適正量は?

日焼け止めの適量の写真

日焼け止めのSPFの効果測定試験では、「試料塗布量 2mg/㎠」の規定量でその効果が測定されています。
つまり、表記のSPFの効果を発揮させるには、1㎠につき2mgの日焼け止めを肌に塗る必要があります。

顔の大きさは、女性なら平均400㎠程度なので、400㎠×2mgで0.8gが必要量です。

この量は、クリームタイプや乳液タイプの日焼け止めなら、パール粒2個程度です。
液状タイプは、1円硬貨2個分程度です。
この量は、思っているよりかなり多い量になります。
まずは、日焼け止めを適正量使うことを意識しましょう。

<参考記事>

2)日焼け止めはこまめに塗り直そう

日焼け止めは紫外線で劣化したり、水分や汗、皮脂、擦れなどで落ちてしまうことがあります。
特に、紫外線が強い夏はその傾向が強くなります。
日焼け止めは、落ちた場合はすぐに塗り直しましょう。
夏は、2〜3時間おきをめどに塗り直すことをおすすめします。

<参考記事>

3)去年の使い残しは使わない

去年買った日焼け止めを今年使うのは止めましょう。
日焼け止めの使用期限は、開封後は1年以内というのが基本です。

その場合でも、次のような条件で保管している必要があります。

  • 直射日光が当たらないところ
  • 高温多湿ではないところ
  • 温度変化が少ないところ

また、もし1年未満でも、実際に日焼け止めを出してみて劣化していたら使用期限切れです。
劣化している状態は、色が変わっていたり、分離が進んでいるようなケースです。
こうしたことから、去年買った日焼け止めの使用は控えることをおすすめします。

<参考記事>

紫外線吸収剤の環境汚染やリスクにまつわるトピックス

1)ハワイ・マウイ郡がケミカルな日焼け止めを禁止

ケミカルな日焼け止めの影響があるサンゴ礁

アメリカ・ハワイ州では、2021年1月より、紫外線吸収剤のオキシベンゾンまたはオクチノキサートを含む日焼け止めの販売と流通が法律で禁止されています。
この2成分は、サンゴ礁の白化を引き起こすことが、一部の研究者から指摘されているため、サンゴ礁の保護の観点から法律が施行されました。
その後、2022年10月1日より、ハワイの広範囲の厳しい法規制が導入され、た。ハワイ州マウイ郡(マウイ島、ラナイ島、モロカイ島など)でケミカルの日焼け止め販売・流通が禁止となりました。
また、認可された医療従事者からの処方箋がない場合、ケミカルの日焼け止めの販売は違法となります。
そのため、ノンケミカルの日焼け止めしか販売・流通していません。
なお、この法律と条例は、居住者だけでなくハワイを訪れる観光客も適用対象となっています。

2)一部の紫外線吸収剤は塗布によって血中に流れる

2019年にFDA(米国食品医薬品局)の試験で、「アボベンゾン(日本の表示名『t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン』)」、「オキシベンゾン(オキシベンゾン-3)」、「オクトクリレン」、「テレフタリリデンジカンフルスルホン酸」の4種類の紫外線吸収剤を肌に塗ると、体内に取り込まれ血中に流れこむことがわかっています。
これらの4成分は試験に参加した24名全員すべての血中よりFDAの定める閾値を超える濃度で検出されたそうです。
試験に参加した人には重大な悪影響は認めらなかったようですが、長期に使ったりするとどんな影響を及ぼすかは不明です。

「オクトクリレン」は、日本ではほとんど使われていませんし、他の3つ頻度や配合量は少ないものの日焼け止めに配合されることがあります。

短期の使用では大きな問題になる可能性は低いと思いますが、これらの成分を配合した日焼け止めをあえて使う必要はないでしょう。

なお、この試験では16種の日焼け止め成分を調べたたそうですが、紫外線散乱剤の「二酸化チタン(酸化チタン)」と「酸化亜鉛」の2成分のみが、全く血中に入ることはなかったそうです。

まとめ

ノンケミカルとケミカルの2種の日焼け止めのそれぞれ特徴や違い、メリット・デメリットをご紹介しました。
いずれの日焼け止めにも、メリットとデメリットがあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
しかし、最近では化粧品開発の技術が進化し、ノンケミカル、ケミカルともにデメリットが少なくなってきました。
そのため、自分の肌や目的に合っているならどちらを選んでも問題が起こるリスクが減っています。
それでも肌質や状況によっては、どちらかがおすすめの場合があります。
たとえば、敏感肌やエイジングケア世代の方、美容医療の後などは、ノンケミカルの日焼け止めをおすすめします。
一方、肌が比較的強い方で使い心地を気にする場合には、ケミカルがおすすめです。

また、いずれの場合も、日焼け止めは適量を正しく使うことが大切です。

日焼け止めを上手に使ってシミやシワを予防しましょう。

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