赤ら顔の症状・原因とスキンケア・治療

■略歴
1981年 川崎医科大学卒業
岡山大学医学部第二外科入局
大学病院及び関連病院
外科勤務
1990年 博士号取得
川崎医科大学形成外科入局
大学病院及び関連病院にて形成外科勤務
美容外科クリニックにて研修
1996年8月 開業現在に至る
2006年~2009年3月 川崎医科大学美容外科 非常勤講師
2010年~2012年 岡山市医師会 理事

■資格
日本外科学会認定 外科専門医
日本形成外科学会認定 形成外科専門医
日本レーザー医学会認定 レーザー専門医 レーザー指導医
日本美容医療協会認定 美容医療適正認定医
日本臨床毛髪学会 名誉会員
乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師

赤ら顔の症状・原因、スキンケアや治療法について、医師監修のもとでお届けします。赤ら顔は、皮膚の毛細血管が拡張した状態です。
多くの場合は、酒さと呼ばれる皮膚の病気です。エイジングケア世代の女性や敏感肌の方に多く、化粧品では改善しません。
この記事では、酒さの症例写真をお見せしながら治療法などを解説します。

赤ら顔とは?

赤ら顔とは、皮膚の毛細血管が拡張して透けてみえている状態です。
多くの場合、医学的には「 酒さ(しゅさ)」と呼ばれる皮膚の慢性炎症性の病気です。
両頬に出ることが多く、赤み、赤いポツポツや網目状の細い血管が見えることもあります。 また、敏感肌の症状が出ることも多いです。

赤ら顔(酒さ)の女性

40代以以降に発症しやすく、男性よりも女性に多い傾向があります。
ひどくなると精神的ストレスの増大にもつながります。早めに皮膚科や美容クリニックで治療することをおすすめします。
また、赤ら顔(酒さ)の悪化を防ぐために、日常生活やスキンケア、エイジングケアでできることもあります。

以下では酒さに統一して話を進めます。

酒さの進行と分類

1)酒さはどのように進む?

酒さは、典型的に次のように進むと考えられています。

ステージ 症状
ステージ1 初期段階で、顔が繰り返し赤くなる、ほてるような症状が現れる
ステージ2 顔の皮膚表面の毛細血管拡張と赤みが常にみられる
ステージ3 赤みやほてりに加え、盛り上がりや膿のたまったブツブツが現れる
ステージ4 鼻が赤く膨らみ、鼻瘤が現れる

2)酒さの分類

酒さは、症状によって4つの型に分類されます。

①紅斑毛細血管拡張型

従来の分類では「第1度酒さ」と呼ばれていました。
毛細血管の拡張で赤みが目立つ状態です。
ほてりやヒリヒリ感があります。

②丘疹膿疱型

従来の分類では、「第2度酒さ」と呼ばれていました。
赤い盛り上がりや膿のたまったニキビのようなぶつぶつが現れた状態です。
ほてりやヒリヒリ感があります。

③鼻瘤・腫瘤型

従来の分類では、「第3度酒さ」と呼ばれていました。
鼻を中心に腫瘤が現れた状態です。
鼻の皮膚が厚くなり、ボコボコとした凹凸が目立ちます。

④眼型

従来の分類では「眼合併症」と呼ばれていました。 赤ら顔だけでなく、眼の充血、異物感やかゆみ、乾燥、まぶしさなど、眼にも症状が現れる状態です。

酒さは、これらの病型が複数混在することがあります。

酒さの原因と憎悪因子

1)酒さの原因はまだ明らかになっていない

残念ながら、酒さの原因は明らかになっていません。
遺伝や免疫の不調、血管の開き具合を調整する神経の問題、毛細血管の構造、皮膚常在菌のバランスなどが関係している可能性が指摘されています。

また、ステロイド外用薬の長期使用は、酒さのような状態(酒さ様皮膚炎)を引き起こすことがあります。

2)酒さの憎悪因子

赤ら顔の発症や悪化に影響を及ぼすものがいくつかあります。
それらは、憎悪因子と呼ばれ、次のようなものをいいます。

<酒さの憎悪因子>

  • 日光暴露(紫外線ダメージ)
  • 精神的ストレス
  • 月経周期による女性ホルモンバランスの変動
  • 高い気温や寒暖差
  • 激しい運動
  • アルコールの摂取
  • 熱いお風呂
  • 熱い・辛いなどの刺激のある食べ物
  • 化粧品(基礎化粧品やメイクアイテム)製品の刺激

酒さの治療は?

酒さを改善するには、医療による治療やスキンケア、憎悪因子の除去の3つがあります。
ここでは、医療による治療について解説します。
なお、酒さの治療には、正確な診断が必要です。
そのため、酒さの症状と似た皮膚疾患である脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、花粉皮膚炎、光線過敏症、尋常性ざ瘡(ニキビ)、膠原病(全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎)、好酸球性毛包炎、顔面播種状粟粒性狼瘡などとの鑑別診断が大切です。
ただし、これらの疾患が酒さと合併していることもあります。

1)医薬品による酒さの治療

医薬品による治療は、外用薬と内服薬に分かれます。 また、保険適応が可能なものとそうでないものがあります。

①外用薬による治療

医薬品 特徴
メトロニダゾールゲル
(ロゼックスゲル)
メトロニダゾールは保険適応で使える医薬品です。 増加している活性酸素種の生成を抑制することで抗炎症作用を発揮します。また、過剰な免疫を抑えるため、酒さに効果が期待できます。
アゼライン酸
(アザクリア)
アゼライン酸は保険適応外の医薬品です。
酒さに対しては、メトロニダゾールと同等の有効性があるといわれています。妊娠、授乳中でも使える点がメリットです。
海外では、30年以上前からニキビの治療薬として使われています。
タクロリムス
(プロトピック軟膏)
タクロリムスは、酒さに対しては保険適応外です。
ステロイド外用薬の過剰な使用によって生じた「酒さ様皮膚炎」で使用する場合もあります。
酒さ・酒さ様皮膚炎を悪化させるリスクや刺激を感じる場合があるので注意が必要です
イオウカンフルローション イオウの成分を含有した外用薬で、保険適応が可能です。
毛包虫(ニキビダニ)の増殖をともなう酒さや皮脂が多いタイプの酒さに効果が期待できます。

②内服薬

医薬品 特徴
抗菌薬 抗菌薬は、酒さで感染が認められると保険適応が可能です。
ロキシスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬、ドキシサイクリン、ミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗菌薬は、炎症を抑える効果、免疫を調整する作用があります。
丘疹膿疱型酒さに対し、有効性が証明されています。
メトロニダゾール外用薬などと併用しながら、1~3カ月程度服用します。
しかし、耐性菌を出現させるリスクがあるので長期使用は避けるべきです。
漢方薬 漢方薬は酒さの一部に対し、保険が適応されます。
紅斑毛細血管拡張型酒さでは、梔子柏皮湯,黄連解毒湯,葛根紅花湯,桂枝茯苓丸,温清飲などが使われます。
丘疹膿疱型には荊芥連翹湯や十味敗毒湯、白虎加人参湯などが使われます。

2)医療機器による治療

医療機器による酒さの治療にも保険適応が可能なものがあります。

①VビームⅡ

 VビームⅡ

VビームⅡという色素レーザーでは、赤ら顔を保険適用で治療することが可能です。 VビームⅡの波長は、血流の赤色(ヘモグロビン)に吸収され反応します。 4カ月以上間隔をあけ、必要に応じて継続的に数回治療を行うことで、血管が徐々に収縮し、赤みが減っていきます。

VビームⅡの施術では、施術後のダウンタイムがあり、3週間程度紫斑が出ます。

酒さ治療のビフォーアフター

施術の説明 レーザーが血流の赤色(ヘモグロビン)に反応することで血管が徐々に収縮し、赤みにはたらきかけていきます。
想定される副作用・リスク 火傷のような症状 色素沈着
料金 ¥30,000〜

②ロングパルスレーザー

ロングパルスレーザー

ジェントルマックスプロなどのロングパルスヤグレーザーを酒さに使うことがあります。
これは保険適応外です。
3週間ごとに5回を1クールとして治療します。
ゴムで強くはじいたような痛みがともないます。そのため、痛みに弱い方や広範囲の場合は、麻酔クリームを使用して痛みを軽減することが可能です。
VビームⅡと違ってダウンタイムはありません。

③IPL(光治療)

フォトフェイシャルステラM22

フォトフェイシャルステラM22などの医療用IPL(光)治療機は、保険適応外で酒さの治療にも使用されることがあります。
IPLは、さまざまな波長のマイルドな光線を出しますが、そのうちの一部が赤色(ヘモグロビン)に反応します。
その結果、ゆっくりと血管が収縮して赤みを抑えていくようはたらきかけます。
IPLは幅広い波長を持つので、赤ら顔だけでなく、皮膚の色味全体や肌質を改善させる効果もあります。
ダウンタイムはありませんが、稀に赤く火傷のような症状や色素沈着が起こる可能性がありますが、半年程度で薄くなっていきます。

ステラM22による酒さの治療のビフォーアフター

施術の説明 IPLが赤色(ヘモグロビン)に反応して毛細血管を収縮させ、赤みを抑えていくようはたらきかけます。
想定されるリスク 熱傷による痂皮や水疱ができる可能性がある(回復に5~10日程度かかる場合がある
色素脱失・色素沈着(多くの場合、半年~1年程度で薄くなる)
紅斑(1~3日間続く場合がある)
料金(1回あたり) 1~5回目: ¥27,500
6回目以降: ¥22,000

④マイクロニードルRF治療

マイクロニードルRF治療は、保険適応外ですが酒さの治療に使われることはあります。
髪の毛よりも微細なマイクロニードル(極細針)で肌に刺入し、マイクロニードルの先端からはRFという高周波エネルギーを出力する治療です。
ポテンツァやエリシスセンスという医療機器があります。

<参考記事>
<監修医からのメッセージ>
赤ら顔で保険適応が可能な色素レーザー「VビームⅡ」の治療は、表面の血管に熱を加えるので直後は内出血したような跡(紫斑)が残ります。
これは、通常、2~3週間程で治まりますが、そこから時間をかけて徐々に赤色が抜けていくという特徴があるので、ゆっくりと治っていくのを見守りましょう。
紫斑ができにくい治療を希望する場合は、ロングパルスヤグレーザーやフォトフェイシャルも選択肢です。
また、酒さは1回の治療で治ることはありませんので、長い目で経過を見る必要があります。さらに、毎回の受診後のアフターケアや毎日のスキンケア、生活習慣などにも気を配ることが大切です。

酒さのスキンケア~どんな化粧品がおすすめ?~

主に酒さの場合のスキンケアやエイジングケアを中心に解説しますが、それ以外の赤ら顔でも同じことがいえます。

1)紫外線ダメージを避ける

紫外線は酒さの悪化因子です。
そのため、一年を通して日焼け止めなどで紫外線をブロックすることが大切です。
日焼け止めは、刺激の小さなノンケミカル(紫外線吸収剤フリー)のものがおすすめです。

また、日傘や帽子、UVカットサングラスなどもあわせて使いましょう。

2)高保湿・低刺激の基礎化粧品を使おう

酒さは、日常的にスキンケアやエイジングケアでしっかり保湿を行うことが大切です。
基礎化粧品は高保湿・低刺激のものを使用しましょう。
セラミドやナイアシンミド、アミノ酸など、バリア機能の低下を改善し、刺激が少ない美容成分がおすすめです。
また、合成香料や合成着色料、アルコールフリーの敏感肌向けのアイテムをおすすめします。

3)優しいクレンジングや洗顔

毎日のメイク落としや洗顔は肌の負担になります。
そのため、刺激の小さなアイテムを選び、優しく行うことが大切です。
ミネラルオイルや拭き取り式のクレンジング料は使用を控え、ジェルやクリームなどの摩擦の少ないタイプを選びましょう。
また、弱酸性やアミノ酸系の洗浄成分が入ったクレンジング料や洗顔料がおすすめです。

洗顔やクレンジングは、合わせて1日2回までとし、ぬるま湯を使ってすすぎを含めて1分程度で終えることも大切です。
肌の天然保湿因子やセラミドを洗い流さないように気を付けましょう。

<酒さ予防や悪化を防ぐナールスのエイジングケア化粧品>

4)メイクでストレス軽減

メイクで赤みをカバーすることは、心理的なストレスを軽減してQOL(Quality of Life=生活の質)の向上につながるため、ポジティブに考えましょう。
ただし、メイクアイテムは低刺激性のものを選びましょう。

日常生活で気をつけること

酒さには、さまざま憎悪因子があります。
すべてを避けることは難しいですが、日常生活では可能な限り対策しましょう。
ここでは、日常生活でのポイントをご紹介します。

1)気温や室温の対策

急激な気温の変化があると、体温の調整機能がはたらきます。
そのため、血管が収縮・拡張することで血流量が増加し、酒さの症状を悪化させます。
ビジネスや旅行で寒暖差の大きな地域への移動、外から室内へ入る際などの気温の差もリスクです。

寒暖差のある地域へ移動の際は衣類やマスクを使うなどで工夫したり、室温は外気との温度変化を極力小さくするよう、温度設定も工夫しましょう。

なお、気温などが急激の上がるなどで顔のほてりが気になる場合でも、無理に冷やさないようにしましょう。

2)食べ物・飲み物の対策

熱い食べ物をはじめ、トウガラシやシナモンなどの香辛料は、酒さ悪化の原因になるので、控えるようにしましょう。また、特に熱いコーヒー、お茶にも注意しましょう。

さらに、アルコールを摂取すると血管が拡張するので、酒さ悪化の原因となります。
お酒の飲み過ぎには注意しましょう。

3)激しい運動は避ける

激しい運動は体温を急上昇させます。そのため、酒さ悪化の原因になります。
激しい運動はできるだけ控え、ストレッチや軽い運動を行いましょう。

4)ストレスを避ける

ストレスも酒さの大敵です。
酒さそのものがストレスになりますが、上手に付き合うように工夫しましょう。
趣味などで気分転換を行うなど、自分なりのストレス解消を見つけましょう。

5)女性ホルモンのバランスを整える

女性ホルモンの乱れは、酒さの症状を悪化させる要因になります。
月経周期の乱れがあったり、生理痛などの症状が強い場合は、婦人科で相談しましょう。

6)花粉やPM2.5

花粉やPM2.5なども酒さの症状を悪化させることがあります。
特に、花粉の飛散やほこりなどが多い春先は要注意です。
マスクやゴーグルなどによる花粉やほこりの対策も大切です。

7)ステロイド外用薬などにも注意

ステロイド外用薬は、酒さの症状を悪化させたり、過剰な使用で酒さ様皮膚炎の原因になります。
ほかにも、アトピー性皮膚炎治療薬のコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)や保湿剤のヘパリン類似物質(ヒルドイド製剤)、ベピオ、エピデュオ、デュアック、ディフェリンなどニキビの治療薬、タクロリムス(プロトピック軟膏)などにも酒さ悪化のリスクがあります。
酒さでお悩みの方は、今、酒さでかかっている医療機関以外を受診する際も、そのことを伝えましょう。

まとめ

赤ら顔の症状・原因とスキンケアや治療法について、医師監修のもとでお届けしました。
赤ら顔は、皮膚の毛細血管が拡張によって目立ちます。多くの場合は酒さと呼ばれる皮膚の病気です。

酒さの治療には医薬品のほか、色素レーザーやIPL(光)治療などが使われます。治療を始めてもすぐに改善するケースは少ないため、何度かの通院が必要な場合が多いです。

また、酒さはスキンケアやエイジングケア、日常生活での対策も大切です。
そこで、酒さの治療からスキンケアやエイジングケア、日常生活での注意点などについてもご紹介しました。
この記事が、酒さに悩む方のお役に立てば幸いです。

<謝辞>
本記事の医療機器及び症例の写真は、すべて河田外科形成外科様からご提供いただきました。本記事の監修と併せて厚く御礼申し上げます。

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