男性の肌老化はテストステロン減少による更年期障害が原因!対策は?

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

■受賞歴
日本抗加齢医学会研究奨励賞(2018年度)

最近では男性もスキンケアやエイジングケアを行う方が増えています。男性の肌への意識の高まりはとても良いことだと思います。
しかし、良い基礎化粧品を使って、どんなに一生懸命にスキンケアやエイジングケアを行っても、加齢など肌老化が進んでしまいます。
その原因の1つが、男性ホルモン「テストステロン」の減少です。
実は、ようやく少しずつ認知度が高まっている男性更年期障害(LOH症候群)は、このテストステロンの減少と大きく関わっています。
今回は、肌を若々しく保ちたい男性にために男性更年期障害やテストステロン減少への対策についてご紹介します。

テストステロン減少が男性の肌老化の原因に

男性ホルモンであるテストステロンは骨格や筋肉量、体毛、な生殖機能など男性の機能と深く関わっています。

そんなテストステロンの減少は、肌のターンオーバーを遅らせる原因の1つとなります。そのため、表皮の代謝が遅くなってしまいます。
その結果、肌の老化の原因となり、乾燥しやすくなったり肌のキメが乱れたります。

また、テストステロンの減少で真皮にあるコラーゲン産生も減ってしまいます。
そのため、肌のハリや弾力の低下し、シワやたるみなどのエイジングサインが目立つのです。

<参考記事>

男性更年期障害とテストステロンの関係

男性更年期障害とはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とも言われています。
男性更年期障害は、テストステロンの減少によって身体的な症状と精神的な症状が現れることがわかっています。

先ほど、テストステロンの減少と肌老化の関係について触れましたが、それだけに留まりません。
テストステロンの減少は、うつ状態、ED(勃起不全)、認知機能の低下、心血管疾患、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性の悪化、AGA(男性型脱毛症)などを引き起こすリスクになります。
つまり、男性特有の機能的な障害に加えて、肥満や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の原因になるのです。

また、憂うつ、イライラ、不眠といった精神症状や疲労感、ほてり、発汗、しびれなどが続くなら、男性の更年期障害の可能性があります。

このようにテストステロン減少は、肌老化よりも深刻な問題の原因になるのです。

<テストステロンのはたらき>
臓器 はたらき
⾻格の成⻑と⾻量の増加に寄与
性欲や記憶⼒・集中⼒アップ
好奇心・チャレンジ精神アップ
筋⾁ 筋⾁の成⻑と維持に寄与
腎臓 ⾚⾎球産⽣を促進
⽪膚 浸透圧の維持などをする⾎清アルブミンを産⽣
肝臓 性欲や記憶⼒・集中⼒アップ
好奇心・チャレンジ精神アップ
男性⽣殖器 ⽣殖器の形成、精⼦形成

男性と女性の更年期障害の違いは?

女性の更年期障害は、40代半ばくらいで、症状が急に現われるため、比較的、自覚しやすいです。

一方、男性の更年期は徐々に現われることが多いです。
テストステロンは20歳頃をピークに加齢とともに減少していきますが、女性ように急激な減少は見られません。
しかし、活性型の男性ホルモンは、40代頃から急激に下がることがあります。
男性が40代や50代になって、男性機能の低下で悩んだり、肥満が進んで生活習慣病にかかりやすくなるのは、テストステロンの減少が大きな影響を与えているのです。
また、20代や30代でも男性機能の低下や肌老化が進んでいる場合は、テストステロンの減少が疑われます。

加齢と性ホルモン分泌の変化

さらに、紫外線ダメージや喫煙、睡眠不足、過労などによる酸化ストレスの増加も男性更年期障害の原因となり、体や肌の老化を進めてしまいます。

男性更年期障害を防ぐことは肌や体のアンチエイジング!

今、説明した男性更年期障害を防ぐことができれば、肌や体のアンチエイジングにつながります。

つまり、テストステロンをいかに減らさないようにするかと酸化ストレスをかに防ぐかがポイントとなります。

そのための方法は大きく2つに分かれます。
1つは日常生活でアンチエイジングにつながることを実践すること、もう1つは医学的なアプローチ法で男性更年期障害の予防や改善を行うことです。

ここからはこの2つについて、解説します。

日常生活でテストステロン減少を防いで肌老化対策

日常生活でできることを紹介します。
肌老化の予防だけでなく体全体の健康やアンチエイジングにもつながる対策です。

ストレスを減らす

テストステロンを減少させる大きな原因の1つにストレスがあります。
そのため、ストレスを減らすことで肌老化の予防やアンチエイジングにつながるのです。
男性の40代、50代と言えば、仕事上の責任も大きくなって、ストレスも増えることが多い年代です。
ストレスを減らすことは難しい部分はありますが、喫煙習慣を止める、飲酒を控える、健康的な趣味で発散する、睡眠を十分に取るなど工夫しましょう。

少しハードな運動でテストステロン減少を予防

テストステロンは筋肉に刺激を与えると増えることがわかっています。また、中強度の有酸素運動をしてもテストステロンが増えることがわかっています。
スクワットや腕立てなどの筋トレを習慣化したり、早歩きのウォーキングやエレベーターを使わずに階段を使うなどの工夫をしましょう。

バランスの良い食生活やサプリメント

たんぱく質を中心としたバランスの良い食生活も大切です。
アミノ酸の一種であるカルニチンには、テストステロンを増やす効果があります。例えば、羊の肉(ラム肉)にはカルニチンが豊富です。
また、ビタミンD、亜鉛を豊富に含む食品を摂取することが重要です。
ビタミンDは魚、亜鉛は貝類に豊富です。
さらに、大豆食品などの発酵食品や食物繊維が豊富な食品で腸内フローラを整る「腸活」もテストステロンを増やすために大切です。

一方、過度な糖質制限をすると筋肉が減り、テストステロンが減るリスクがあります。
過度な糖質制限ダイエットは避けましょう。

<参考記事>

紫外線対策は基本!しかし、日光浴も大切

紫外線対ダメージは、肌の酸化を進め直接的にシワやシミの原因になるほか、免疫低下などの原因にもなります。
そのために基本的に男性も肌老化予防のためには、日焼け止めを使ったり、UVカットサングラスや帽子、衣類などで紫外線対策をすることをおすすめします。

一方、適度な日光浴はテストステロンを増やすことがわかっています。一日10分程度の日光浴でもテストステロンの分泌が2割程度上昇するという研究報告があります。

紫外線対策を行う一方で、1日10分程度の日光浴を行いましょう。

医学的アプローチで男性更年期障害を改善

男性更年期障害の症状が進んでいる場合は、日常生活での対策と併せて、医学的なアプローチ、つまりクリニックで治療を行うことも考えましょう。
最近では男性専門のクリニックや泌尿器科で男性更年期障害の治療が可能なところもあります。

テストステロン注射

テストステロンは血液検査で調べることが可能です。テストステロン減少が著しい場合は、注射により体内に直接テストステロンを補充する治療が良い選択肢です。

ただし、テストステロンはPSA高値や前立腺がんを有する方には使用できません。
また、テストステロンを打つ前には必ず血液検査を行い、医師が問題ないかを判断します。

テストステロンクリーム

「グローミン」という製品名テストステロンのクリームも市販されています。
また、クリニックで処方されることもあります。
効果に点では注射の方が高いですが、クリームは手軽な点がメリットです。

NMN点滴・注射

最近話題になっているNMN点滴・注射は、男性更年期の症状も治療できます。
NMNは「ニコチンアミドモノヌクレオチド」の略で、体のさまざまな臓器や組織を修復するはたらきがある成分(ビタミンB3の一種)です。NMNは体の中で自然に作られていますが、加齢とともに生産量が減っていきます。特に40代になると、10代後半のピークの半分になってしまいます。
そこで、エイジングケアを期待して点滴によって直接投与するという「NMN点滴療法」が美容医療で人気です。

NMN点滴は、テストステロン減少が無い場合でも肌老化の予防やエイジングケアに役立ちます。

まとめ

男性の肌老化はテストステロン減少による更年期障害が原因であることをご紹介しました。
もちろん、肌老化の原因はそれだけではありませんが、気にしていただくことも大切です。
なぜなら、テストステロンの減少による男性更年期障害は、肌の問題というより男性機能や健康全体に関わってくるからです。
特に、40代、50代のはたらきざかりの男性は残りに人生を豊かに健康に過ごすためには、男性更年期障害の予防や改善に取り組んでいただければ幸いです。

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