30代や40代の方は、一生懸命エイジングケアを行っていても、大人ニキビで悩むことはありませんか。
薬用の化粧品や皮膚科に通ってもニキビが治らないといったこともあるのではないでしょうか。
そんな際の治療の選択肢として、避妊薬として知られている低用量ピルが効果を発揮します。
ニキビや大人ニキビの多くは、皮膚科で塗り薬や飲み薬で治療することが多いです。
しかし、中には皮膚科で治療しても、しっかりスキンケアをしても、うまく改善しないことがあります。
また、次のようなケースもあります。
・美容皮膚科に通ってもニキビが改善しない
・エステに通ってもニキビが改善しない
・洗顔方法を見直すなどスキンケアニキビが改善しない
そんな場合の選択肢が低用量ピルによるニキビや肌荒れの治療です。
ここでは、日本産科婦人科専門医として、低用量ピルがニキビや肌荒れに効果を発揮するメカニズムや安全性・リスクなどを解説します。
大人ニキビとホルモンの関係
1)ニキビは月経周期でできやすくなる時期がある
ニキビが発症する始まりは、皮脂腺が皮脂を過剰に分泌することです。そして、肌に炎症を起こせばニキビとなります。
そんな皮脂分泌は女性ホルモンと深い関係があります。
女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。
この2種類の女性ホルモンの分泌と月が周期は深く関係していますが、ニキビや肌荒れになど肌トラブルにも影響を与えています。
月経前から月経中にかけてニキビができやすくなるのは、主にプロゲステロンが関係しています。
なぜなら、プロゲステロンには皮脂の分泌を促す作用があるからです。
プロゲステロンは、排卵の後から生理前にかけて分泌が増加します。その影響でこの時期には、皮脂が過剰になりやすく、毛穴に詰まりやすくなってしまいます。皮脂が毛穴に詰まると、それが炎症を引き起こしニキビや肌荒れの原因知なってしまうのです。
一方、エストロゲンは月経前から月経中にかけて、分泌量が減ります。
エストロゲンには、肌に潤いをもたら作用がありますが、減少の影響でこの時期は、肌は乾燥しやすくなります。
肌が乾燥すると肌のバリア機能が低下しますが、それを回復させるために肌は皮脂を分泌します。
その結果、ニキビができやすい肌状態になってしまうのです。
このようにプロゲステロン分泌の増加とエストロゲン分泌の減少が起こる月経前から月経中は、ニキビができやすいのです。
2)エイジングも大人ニキビの原因になる
エイジング、つまり加齢も大人ニキビの原因になりえます。
年齢を重ねるごとに女性ホルモンは減少するとともに、バランスは乱れやすくなります。
そのために、30代を過ぎると女性も男性ホルモンが相対的に優勢になります。
男性ホルモンはもともと女性で分泌されていますが、20代や30代ではバランスが取れていると肌トラブルになることはありません。
しかし、加齢やストレスなどが原因となって、ホルモンバランスが崩れることで男性ホルモンが優勢になることがあります。
男性ホルモンには、皮脂を分泌するはたらきがあるため、バランスの崩れた状態が続くと、大人ニキビの原因になるのです。
大人になり30代、40代では、月経前のホルモンバランスの変化と加齢による乱れが加わるとよりニキビになってしまう確率が上がるのです。
<参考記事>
低用量ピルの大人ニキビへの効果のメカニズム
今、説明したとおり、ニキビの始まりは、皮脂の過剰分泌です。
皮脂量は、通常、女性ホルモン及び男性ホルモンによってコントロールされていますが、低用量ピルには、女性ホルモンをコントロールするはたらきがあります。
このはたらきは避妊のためにも有効ですが、過剰な皮脂分泌も抑えるのでニキビの予防や改善に役立つのです。
最近では、婦人科や美容皮膚科などこの低用量ピルのメカニズムに着目して、ニキビの治療に使うケースが増えてきています。
低用量ピルでは、大人ニキビや思春期のニキビ、慢性的な炎症で組織が固くなったしこりのあるニキビにも効果が期待できます。
<参考記事>
効果が高い低用量ピルは?
低用量ピルにはいくつかの種類がありますが、ニキビや肌荒れに対する予防・治療の効果が同じではありません。
ニキビに効果が高いのは、1相性の低用量ピルです。1相性とは、低用量ピル1シートで実薬の女性ホルモン配合量がすべて一定のタイプです。
一方、1シートで生理周期に合わせて段階的にホルモン量が調節されている3相性タイプの低用量ピルがありますが、ニキビに対しては1相性の低用量ピルと比べて効果が劣ります。
1相性の低用量ピルには、先発医薬品の「マーベロン」やその後発医薬品(ジェネリック)である「ファボワール」があります。
ともに有効成分の種類や量は同じで、「デソゲストレル」という黄体ホルモンが含まれています。
デソゲストレルは、男性ホルモンの過度なはたらきを抑える効果があります。その結果、皮脂の過剰分泌を防ぎ、ニキビ肌の治療に効果を発揮します。
また、含有ホルモンの量が少ないので、副作用が起こりにくいこともメリットです。
また、ヤーズフレックスという超低用量ピルもニキビに効果が高い医薬品です。
含有ホルモン量が少ないため、個卵胞ホルモンによる吐き気や頭痛などの副作用が起きにくいというメリットがあります。また、「抗ミネラルコルチコイド作用」によって利尿作用があるので、むくみにくいメリットもあります。
ただし、低用量ピルは、ニキビの治療に使う場合、保険適応が無いので自費診療となります。
といっても、それほど高額にはなりません。
1カ月2,000円~3,500円程度です。
<参考記事>
低用量ピルはどこで処方してもらう?
まだ低用量ピルをニキビに処方しているクリニックは、多くありません。
主に婦人科や美容クリニックの一部です。
そのため、近くで診察を受けてみたいと思ってもなかなか見つからないこともあります。
そんな場合は、オンライン診療も選択肢となります。
オンライン診療は住んでいるエリアを選びません。
また、予約できる時間帯が長く、初診・再診ともに予約しやすいメリットがあります。
さらに、多くは国産の正規品であり、豊富な種類のピルを取り揃えていることが多いです。
近くに低用量ピルを扱っている婦人科や美容クリニックなどが無い場合は、オンライン診療の活用を検討しましょう
気を付けたい副作用やリスク
低用量ピルには、吐き気・頭痛・倦怠感、不正出血、胸の張り・乳房痛などの副作用があります。
これらは、を2~3シートほど飲み続け、ホルモンバランスが緩やかになることで落ち着くことがほとんどですが、個人差もあり合わない場合がないわけではありません。
また、低用量ピルの副作用の中で、特に注意が必要な副作用として血栓症があります。血栓症とは血液が固まって血管を塞ぐ病気で、重篤な場合には命に関わることもあります。ピルを内服すると、血栓症の一種である静脈血栓塞栓症のリスクが高くなります。
もし、四肢や胸の痛み、息切れなどの症状が見られた場合はすみやかに服用を中止する必要があります。
そのため、低用量ピルの服用に際しては、効果と安全性や自分に合うかどうかを考えて、種類を選ぶかが非常に重要です。
婦人科などピルに対する専門知識のある医師の診断を受け、最適なものを処方してもらいましょう。
また、低用量ピルについて正しく理解し、適切に服用することが大切です。
実際にクリニックに行って診察を受ける場合もオンライン診療の場合も、不明なことやっ不安なことが無くなるように、しっかり相談しましょう。
<参考記事>
まとめ
低用量ピルのニキビに対する効果のメカニズムやどんな場合に使うかについて解説しました。
低用量ピルは、皮脂をコントロールするはたらきがあるため、ニキビに効果を発揮します。
保険診療では使えませんが、セルフケアや皮膚科での治療で改善が難しい場合の選択肢となります。
一方、副作用のリスクもあるため、医師と相談しながら適切に選んで、正しく服薬することが大切です。
大人ニキビは、30代以上のエイジングケアを行っている方にも発症することが少なくありません。
症状が進むとスキンケアやエイジングケアでは改善しないので、早めにクリニックを受診しましょう。