肝斑の改善は美容内服薬やピコトーニングがおすすめ!

■ 経歴
2009年 鳥取大学医学部医学科卒業
2009~2011年 豊橋市民病院初期研修医
2011年~2019年 名張市立病院消化器内科、循環器内科入職後、内科指導医、循環器内科医長
2019年 大手美容外科入職後、宇都宮院院長兼技術指導医
2021年 大手美容皮膚科 名古屋院院長
2022年 まゆりなclinic名古屋栄開院

■資格・所属学会
日本美容外科学会正会員
日本内科学会内科認定医、総合内科専門医
日本循環器学会循環器専門医
日本抗加齢医学会専門医など

肝斑は、女性ホルモンの乱れなどがきっかけで30〜40歳代で発症することが多いシミの一種です。
紫外線ダメージも悪影響を与えますが、ほかのシミとは異なる特徴があります。
そんな肝斑は、スキンケアやエイジングケアでは改善が難しいため、美容内服薬やピコトーニングなどの美容医療の力で改善を目指すことがおすすめです。
この記事では、肝斑の症状や原因、おすすめの美容医療の治療法についてご紹介します。

肝斑の症状

肝斑は、頬骨のあたりを中心にして左右対称に目立つことが多いです。
また、額や口の周辺などにも左右対称で現れます。
額では、眉の上から髪の毛の生え際付近まで、ぼんやりとした状態で現れます。一方、眉の下や目の周りにはできないのが特徴的です。
口周りでは、口を縁取るように一周囲むような肝斑が現れる場合もあります。また、アゴの近くまで広がったり、鼻下にぼんやりと広がって現れることもあります。

このように肝斑は、輪郭がはっきりせず、薄い褐色のシミが広範囲に現れるのが特徴です。

肝斑の症状が現れるのは、主に30代や40代です。
また、新たに肝斑ができるのは50代後半までで、60歳以降は薄くなったり、消えたりすることがあります。
そんな肝斑は、スキンケアやエイジングケアでは残念ながら改善しません。

最近の研究では、肝斑がある部位では、経表皮水分喪失量(TEWL)が多く(*1)、バリア機能が低下していることもわかっています。

*1:Defective barrier function in melasma skin

肝斑の症状
[提供:かわもと医院きれいクリニック]

<参考記事>

シミには老人性色素斑ほかいつくかの種類がありますが、根治が難しいのが肝斑です。
その理由は、原因がまだ十分に解明されていないため、誤った選択をすれば治療によってかえって悪化するケースがあるからです。

シミの種類と現れるパーツ
[提供:まゆりなclinic名古屋栄]
<参考記事>

肝斑の原因

肝斑は、メラニンが活発に生成されていることで発症しますが、その原因は次のようなものがあります。
ただし、現時点では肝斑発症の原因やメカニズムが完全に解明されているわけではありません。

1)女性ホルモン

肝斑の原因でよく知られているのは女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)です。妊娠中にできやすいこと、月経不順や経口避妊薬(ピル)の服用、ホルモン補充療法がきっかけで発症したり、悪化することがあります。

2)紫外線

紫外線曝露が、肝斑発症の誘因になるとともに、悪化をもたらします。
近年の研究で、慢性的な紫外線ダメージで光老化を起こした表皮や真皮の線維芽細胞もメラニンを活性化させることがわかってきました。

3)薬剤

避妊薬(ピル)や抗痙攣薬(こうけいれんやく)、光毒性薬剤、ホルモン剤なども肝斑の原因になります。

4)そのほか

肝機能障害や化粧品成分、遺伝、心理的要因なども肝斑発症に関わっている可能性があります。

肝斑は鑑別診断が大切

肝斑はシミの中で特に鑑別診断が大切です。
なぜなら、一般的なシミ「老人性色素斑」とは異なり、メラニンをつくる細胞(メラノサイト)が活性化して、肌内部で炎症が起こっている状態だからです。
そのため、治療にはより慎重な対応が必要です。

その手段として、当院「まゆりなクリニック」では、NeoVoir1(ネオヴォワールワン)という診断機器を使用して鑑別診断をします。
診断機器を使うことで、肉眼で見えない隠れシミが見えたり、見逃しがちな肝斑がはっきりわかります。
また、老人性色素斑(いわゆるシミ)やそばかすに隠れて肝斑が見つかることもよくあります。

肌診断機器NeoVoir1
[提供:まゆりなclinic名古屋栄]

当院では、「シミが悪化して困っている」といった患者様がよく来られますが、他院で光治療をして肝斑が悪化したり、メラノサイトの活性化を起こしている場合も多いのです。

そのため、シミが悪化したということで来られた患者様の場合、肝斑の可能性を疑い、経緯を聞くとともに、肌診断機器を使って鑑別診断を行います。

<参考記事>

肝斑の美容医療による治療

肝斑をはじめシミの治療は、医療従事者と患者様の共同作業で治すという意識が大切です。
治療をしている期間は、日焼け止めや保湿などのホームケアを徹底しましょう。

また、肝斑の治療は保険診療ではありません。
そのため、皮膚科であっても美容皮膚科であっても自由診療となり、患者様が全額負担することになります。

1)スタートは美容内服薬

肝斑の治療は、美容内服薬からスタートすることが基本です。
トラネキサム酸やビタミンC、ビタミンEなどの内服薬を使います。
中でも、第一選択はトラネキサム酸です。
トラネキサム酸は、まず1回2錠、1日2回の服用を1カ月続けます。その段階で改善が認められたら、さらに1カ月、2カ月の服用を続けます。
しかし、肝斑は一度改善してもまた発症することがあります。再発した場合は、2カ月の間隔をあけて再び服用を始めることができます。
この期間中は、肌を擦らないことや紫外線対策をしっかり行うことがとても大切です。

<参考記事>

2)外用薬

肝斑は、外用薬を使って治療することがあります。
ハイドロキノンやトレチノイン、トラネキサム酸、アゼライン酸などが外用薬として使われます。

<参考記事>

3)ケミカルピーリング

肝斑の治療には、グリコール酸やサリチル酸、トリクロロ酢酸などの薬剤によるケミカルピーリングを行うこともあります。
当院では、コラーゲンピール(マッサージピール)に肝斑に効果的な成分を加えて工夫した最新の浸透型ケミカルピーリング「リバースピール」で治療を行います。
また、トラネキサム酸を配合したトラネックスピールという浸透型ケミカルピーリングも登場しています。

<参考記事>

4)エレクトロポレーション

当院では、重症な肝斑の場合は「C-OPERA」というエレクトロポレーション機器を使って、肌環境を整えてからレーザー治療をする場合もあります。
また、エレクトロポレーションは、レーザー治療後の鎮静や保湿に用いられ、シミの治療後の色素沈着や再発予防や修復が良くなります。

イオン導入とエレクトロポレーションの違い
<参考記事>

5)レーザー治療(レーザートーニング・ピコトーニング)

従来、レーザー治療は肝斑の悪化リスクがあり、使えませんでした。
しかし、最近では美容内服薬や美白外用薬、ケミカルピーリングなどで改善が難しい肝斑に使える照射方法が登場しています。

それがQスイッチレーザーを使うレーザートーニングやピコレーザーを使うピコトーニングです。

①レーザートーニング

レーザートーニングとは、Qスイッチレーザーを使って、弱いパワーで肌に余分な刺激を与えることなく、蓄積したメラニンに少しずつアプローチする肝斑の治療法です。
Qスイッチレーザーとは、ナノ単位の極短時間レーザー光線を照射できる高速のレーザーです。
ほぼダウンタイムはありません。

②ピコトーニング

ピコトーニングとは、弱いレーザーのパワーを顔全体に照射して、刺激を与えず徐々に色を薄くする施術方法です。
ほぼダウンタイムはありません。
ピコトーニングは、レーザートーニングよりもおすすめの肝斑の治療法です。

従来のレーザーとピコレーザーの違い

ピコレーザーは、Qスイッチレーザーよりピコ単位のごく短時間にレーザー光線を照射できる超高速のレーザーです。
レーザーは照射時間が短くなるほど、皮膚組織へのダメージを少なくして色素を破壊できるので、ピコトーニングはレーザートーニングより肌へのダメージが小さな治療法といえます。

それでも、肝斑は治療に難渋する場合もあり、経過を診ながら治療方法やレーザーのエネルギー数を変えながら治療していきます。
また、ピコトーニングは、肝斑以外の薄いシミやそばかすも治療できます。
そのため、回数を重ねることで、お顔全体がトーンアップしていきます。

ピコトーニングの照射イメージ

現在では、いろいろな機種のピコレーザーがありますが、当院では、米国のキュテラ社が開発したエンライトンSRを採用しています。
日本で厚生労働省の認可を受けている一流のNd:YAGレーザーです。

エンライトンSRは、レーザー照射のバリエーションが豊富なので、シミや肝斑を優しく除去する場合から、タトゥーを強力に除去する場合まで、幅広い治療に対応可能です。

<参考記事>

③マイクロニードルRF

最近では、マイクロニードルRFが肝斑治療に使われることがあります。
マイクロニードルRFとは、微細な針で肌に穴をあけ、肌奥の真皮層に高周波による直接熱を与え、肌質を改善する治療です。
肝斑にも使える治療法ですが、毛穴・色くすみ・赤ら顔・ニキビ痕などに効果を発揮します。

マイクロニードルRF治療の機器には、ポテンツァやエリシスセンス、シルファームなどがあります。

<参考記事>

悪化を防ぐためにスキンケアやエイジングケアも大切

1)保湿ケア

肝斑の治療中や予防のためには、スキンケア化粧品による保湿が大切です。
刺激が少なく保湿力の高いアイテムを使ってしっかり保湿しましょう。

<参考記事>

2)紫外線対策

紫外線は肝斑の憎悪因子であり、原因にもなりえます。
紫外線の強い夏に外へ出かける時はもちろん、冬でも日焼け止めを塗ることが大切です。
日焼け止めは、肌の刺激になりにくいノンケミカル処方の日焼け止めがおすすめです。
夏などは汗で日焼け止めが流れてしまうこともあるので、汗をかいたら塗り直しましょう。

また、帽子、衣類、UVカットサングラスなども使いましょう。
さらに、飲む日焼け止めもありますので、塗る日焼け止めに加えて内服すれば、日焼け止めの相乗効果も期待できます。
ほかには、ビタミンCの内服も抗酸化作用があり、肝斑の再発や色素沈着なども予防できます。

<参考記事>

3)肌を擦らない・叩かない・ひっぱらない

肝斑はメラニンがつくり続けられている状態なので、特に肌へのダメージを与えないことが大切です。
肌を擦るや叩く、引っ張るなどは避けましょう。
ゴシゴシ擦る洗顔、スクラブ洗顔、化粧水のパッティング、強い力でのフェイスマッサージ、美顔ローラーなどの使いすぎなどは控えましょう。

まとめ

肝斑の症状や原因、鑑別診断、美容医療による治療法や日常のエイジングケアやスキンケアについて解説しました。
中でも、最近注目されている肝斑のピコトーニングによる治療について詳しく解説しました。
肝斑はシミの中で治療が難しいタイプです。
まずは、日々のスキンケアやエイジングケアで予防を心がけましょう。
しかし、一旦目立ってしまうと、美白化粧品やエイジングケア化粧品などを使っても改善しません。
気になる場合は、美容医療による治療を受けましょう。
今では美容内服薬やピコトーニングをはじめ、さまざまな治療法があるので、皮膚科や美容クリニックで相談して自分に合った治療を受けましょう。

<参考書籍>
美容皮膚科学BEAUTY「とことん、肝斑」(医学出版)

<謝辞>
本記事の写真・図表は、まゆりなクリニック名古屋栄様及びかわもと医院きれいクリニックにご提供いただいています。
両クリニック様に感謝申し上げます。

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