40代や50代の女性の皆様は、プラセンタと聞くとエイジングケア化粧品やサプリメントを思い浮かべませんか?
実際、そのとおりでプラセンタから抽出した「プラセンタエキス」は、エイジングケア化粧品やサプリメントで良く使われています。
これらのプラセンタエキスは、馬や豚などのプラセンタが原料となっています。
一方、プラセンタは医薬品としても使われていることをご存知でしょうか。
医薬品のプラセンタは、日本国内でお産をしたヒトのプラセンタから作っています。
そんな医薬品のプラセンタは、女性の更年期障害の治療に使われます。
ここでは、医薬品のプラセンタの更年期障害に対する効果や安全性についてご紹介します。
40代や50代で更年期障害が気になる方は、ぜひ、続きをチェックしてください。
そもそもプラセンタとは?
[提供:沢岻美奈子女性医療クリニック]
プラセンタ(Placenta) とは哺乳動物の「胎盤」のことです。
プラセンタは、妊娠している女性の子宮で受精卵が胎児として育っていく際に、「お母さんと赤ちゃんとをつなぐ臨時の臓器」として作られます。
そして、プラセンタと赤ちゃんは「へその緒」で結ばれます。
お腹の中の赤ちゃんは、へその緒を通して、プラセンタから成長に必要な全ての栄養や酸素を受け取ります。
また、代謝で不要になった排泄物をお母さんの体に渡します。
プラセンタの働きはこれだけでなく、ホルモンや生理活性物質、各種の成長因子など全てをお腹の中の赤ちゃんに供給し、さらに毒物や異物の侵入からも守る免疫機能も果たすのです。
プラセンタは、常にこれを繰り返してお母さんが赤ちゃんを出産するまで働き続けるのです。
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そんなプラセンタには、赤ちゃんの成長にとても大切なアミノ酸や各種ビタミン、成長因子、ミネラル、酵素などの栄養素が豊富に含まれています。
つまり、プラセンタは人の成長のための栄養素の宝庫であり、免疫をはじめとする人の生命にとってとても大切な役割を果たしているのです。
プラセンタは古くから医薬品として使われてきた
中国漢方では古来より紫河車(シカシャ)と言って、胎盤を生薬として用いていました。
実はプラセンタが医薬品として使われ始めたのは日本では1956年とかなり昔です。
このプラセンタは、「メルスモン」という名前で、更年期障害や乳汁分泌不全の治療薬として開発されました。
そして現在に至るまで使われ続けています。
2023年には、一時、製造販売承認書の変更手続きに伴い出荷停止となりましたが、2024年になり再び通常通り出荷されるようになっています。
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医薬品のプラセンタは、注射することで内分泌調整作用や自律神経調整作用があります。
その作用によって、疲労感、倦怠感、ほてり、のぼせ、肩こり、イライラ、手の痛み、不眠などの更年期症状を改善する効果が期待できるのです。
プラセンタにはほかに「ラエンネック」という医薬品もあります。
こちらも基本的には、同じプラセンタですが、違う効能効果で臨床試験を行い「慢性肝疾患における肝機能の改善」の適応を取得しています。
このように医薬品のプラセンタは、メルスモンとラエンネックがありますが、供給する製薬会社が異なり、小さな違いがあります。
|
ラエンネック |
メルスモン |
胎盤エキス量 |
112mg |
100mg |
添加物 |
ペプシン・乳糖・PH調整剤 |
ベンジルアルコール |
注射時の痛み |
やや強い |
弱い |
プラセンタ注射「メルスモン」は保険適応?自費?
1)メルスモンは条件付きで保険適応が可能!
[提供:沢岻美奈子女性医療クリニック]
更年期障害において、保険診療で使えるのは、更年期障害に対する効能・効果を取得しているメルスモンです。
ただし、一定の条件があります。
メルスモンは下記の条件を満たした場合には、保険適応となります。
●45〜59歳の女性で更年期障害の治療使う場合
●乳汁分泌不全(産後1年以内)で使う場合
保険適用の場合、注射1回の治療費は、三割負担で 約500円です。一回につき注射一アンプルを月15回まで治療が可能です。
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プラセンタ注射の効果持続期間は2~3日と言われています。
持続性が低いため、2~3日おきに定期的に注射をすることで治療効果を期待することができます。
適切な注射の回数は、更年期障害の症状や個人によって異なりますので、医師に相談しましょう。
2)健康増進や美肌目的なら自由診療
プラセンタには、更年期障害の症状改善や妊婦の乳汁分泌促進作用以外にも、次のような作用があります。
●免疫賦活作用:病気に対する抵抗力を高める
●活性酸素除去作用:活性酸素を除去し、老化を防ぐ
●強肝・解毒作用:肝臓の働きを強化する
●抗アレルギー作用:アレルギーを抑える
●疲労回復作用:疲労の回復を促す
●美肌促進作用:シミ、シワ、ニキビを抑え、美白を促す
そのため、疲労回復、二日酔い、美白・美肌、健康増進にも効果が期待できますので、男性の方でも受けていただける注射治療です。
これらの目的でプラセンタ注射を打つ場合は、自費診療となります。
自費診療の場合は、費用は1回1,200円~1,500円程度です。
注射の回数は、個人差はありますが、まずは週に2~3回のペースで最低1ヵ月継続することで効果が実感できます。
その後は週1回程度での継続をおすすめします。
<参考記事>
プラセンタの安全性と注意
メルスモンは、加熱殺菌処理を行ったヒト由来のプラセンタで、すでに安全性が確認され、厚生労働省に承認されています。
また、長年の使用でもヒト胎盤を原料として製造される医薬品の投与で、感染症が伝播したとの報告は現在まで国内・海外ともにありません。
しかし、ヒトプラセンタは、特定生物由来製品のため、使用においては同意書が必要です。また、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等の伝播のリスクを完全には否定することはできません。
そのため、輸血やメルスモンを含め、ヒト組織や血液を原料とした製品を1回でも使用した方は、献血ができなくなります。(ただし、輸血を受けることはできます。)
更年期障害について知ろう!
1)更年期障害とは?
ナールスのエイジングケア化粧品のお客様の多くは40代から50代ということですが、まさに更年期前から更年期真っ最中の方が多いと言えます。
日本産婦人科学会の更年期障害の定義は次のとおりです。
閉経の前後5年間を更年期といい、この時期に現れる多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しない症状を更年期症状と呼び、これらの症状の中で日常生活に支障を来す病態を更年期障害とする
器質的変化とは、組織や細胞が、変形、変性あるいは破壊され、元の形に戻らなくなるように変化することです。
更年期障害は器質的変化がない、つまり、組織や細胞そのものに見た目の異常がないにもかかわらず、心身の症状が現れる病気です。
2)女性ホルモンの急激な減少が更年期障害の原因
更年期障害や更年期の症状には深く女性ホルモンが関係しています。
女性ホルモンであるエストロゲンは以下のような働きをしています。
●子宮や乳房の働きを活発にする
●妊娠ができるように子宮を整える
●自律神経のバランスを保つ
●骨量を保つ
●コレステロールのバランスを保つ
●認知機能を保つ
加齢とともに女性ホルモンの分泌量が低下しますが、40代から50代で大きくゆらぎながら急激に低下します。
そのため、女性ホルモンによるはたらきが弱くなって、更年期障害が発症します。
また、更年期障害には、加齢などの身体的因子、成育歴や性格などの心理的因子、職場や家庭における人間関係などの社会的因子なども関係していると言われています。
<参考記事>
更年期障害の対策や治療はプラセンタ以外にもある
更年期治療の選択肢はプラセンタ注射だけではなく、漢方薬やホルモン補充療法、エクオールという成分を使ったサプリメントなどがあります。
漢方は東洋医学で、更年期障害の症状改善に良い治療法です。多彩な更年期障害の訴えを持つ場合に良い適応となります。また、ホルモン補充療法が使えない場合も良い治療法です。
ホルモン補充療法は、英語の頭文字を取ってHRT(Hormone Replacement Therapy)とも呼ばれます。
ホルモン補充療法は、減少したエストロゲン(卵胞ホルモン)を補充する療法です。また、子宮を有する場合には、プロゲステロン(黄体ホルモン)を一緒に投与します。
ホルモン補充療法は、は保険適用で更年期障害の根本的な治療法です。
エクオールサプリメントは、大豆イソフラボンが腸内細菌で変換されて生まれるエクオールという成分を使った日本発の更年期用のサプリメントです。
医薬品ではないので補助的に使います。
医師の処方箋がいらないので、薬局やオンラインで直接買うことができます。
軽い更年期症状の場合、エクオールサプリメントから初めてみるのもいいでしょう。
値段は大体4000円前後です。
一人一人異なる更年期の症状を考慮して、これらを選んだり組み合わせて治療を行うのです。
<参考記事>
まとめ
40代や50代の皆様には、その名前がよく知られているプラセンタが、医薬品として更年期障害に使用されていることや、その効果や使い方、保険適応の条件などについて解説しました。
また、更年期障害の原因や症状、治療にも触れました。
エイジングケア化粧品やサプリメントとしてよく知られているプラセンタは、古くから医薬品として更年期障害の治療に使われてきました。
プラセンタ「メルスモン」は保険適応も可能なので、更年期障害に悩まれる方は、婦人科のクリニックに相談してみてはいかがでしょうか。