肌とIBS(過敏性腸症候群)の関係!便秘・下痢を改善して美肌へ!

◆学歴
平成6年 甲府西高等学校卒業
平成12年 群馬大学医学部卒業

◆職歴
東京大学医学部附属病院 外科研修医
東京専売病院 麻酔科研修医
焼津市立総合病院 外科
東京大学医学部附属病院 大腸肛門外科・血管外科
藤枝平成記念病院 外科

◆資格
日本外科学会専門医
日本消化管学会胃腸科専門医
日本抗加齢医療学会専門医
内痔核四段階注射法認定医
検診マンモグラフィ読影認定医

◆所属学会
日本外科学会
日本消化管学会
日本大腸肛門病学会
日本抗加齢医療学会

なかじま胃腸クリニック 院長中嶋 仁先生から、IBS(過敏性腸症候群)と肌の関係、原因や治療法について解説していただきました。また、ナールスからはセルフケアでできる腸内環境の改善の方法をご紹介します。IBS(過敏性腸症候群)と腸内環境の改善で健康と美肌を目指しましょう。

皮膚と脳・腸はつながっている

エイジングケア化粧品などで一生懸命、スキンケアやエイジングケアを行っているのに、肌の状態が良くならないといったことはありませんか?

もしかしらたら、下痢や便秘が続くなどの症状はないでしょうか?
実は、医学の研究が進み、皮膚と腸や脳が深くかかわっていることがわかっています。それを医学用語で「脳腸皮膚相関」と呼びます。

ここでは、なかじま胃腸クリニック 院長中嶋 仁先生から主に皮膚と腸の関係について医学的な観点からエイジングケア化粧品ナールスのご愛用者様におなかの健康と美容や心身の安定に役立つメッセージをお送りいたします。

<参考記事>

下痢や便秘が続くなら過敏性腸症候群(IBS)かも?

お腹の調子が悪くなり、下痢や便秘といった異常が慢性的に続くことはありませんか。
その場合は、過敏性腸症候群かもしれません。
過敏性腸症候群とは、お腹の調子が悪くなり、下痢や便秘といった異常が慢性的に続く病気です。
英語では、「Irritable Bowel Syndrome」と呼ばれ、その英名を略して、「IBS」と呼ばれることもあります。
過敏性腸症候群は、下痢や便秘の症状はあっても、腸を検査しても、腫瘍や炎症といった目立つ異常がない病気です。
つまり、器質的な異常がないにもかかわらず、下痢や便秘などの症状がでてしまうのです。

お腹の不調や便秘、下痢といった異常が数カ月にわたる症状の約10%は過敏性腸症候群が疑われます。
また、男性よりも女性の発症が多いことがわかっています。

過敏性腸症候群は、幸いにも命を脅かすことはありません。
しかし、腹痛、排便の異常などで患者様に大きなストレスを強いることになる病気です。
そのため、ストレスや腸の不調から来る肌荒れになってしまうリスクもあるのです。
そんなことから美肌をキープしたい女性は気をつけたい病気の1つと言えます。

<IBSの4つの型>

IBSの型 特徴
便秘型 便が通りづらくなって便が長く腸に留まっている型
・女性に多い
・便秘が続いてお腹が苦しい
・硬く、コロコロとしたうさぎの糞のような便が出る
・ストレスがかかると、便秘がひどくなる
下痢型 下痢と便秘を繰り返し、お腹の状態が不安定な型
ストレスを感じると、頻繁に下痢と便秘を繰り返すことがある
混合型 腸の動きが激しく、便が水分を保ったまま素早く腸内を通り過ぎてしまう型。
・男性に多い
・緊張するとおなかが痛くなり、下痢をする
・ストレスがかかると、下痢がひどくなる
分類不能型 上記3つのいずれにも分類されない症状が出ている型

過敏性腸症候群(IBS)の原因は?

過敏性腸症候群の直接的な原因は現在、完全に解明されているわけではありません。
わかっていることは、何らかの要因により腸の知覚が過敏になると、過敏性腸症候群になりやすいことです。
腸は、健康な場合、知覚をもとに収縮運動を調整しますが、知覚が過敏に働くと収縮運動が激しくなり、痛みを感じやすくなってしまうのです。
腸が過敏になるのはストレスや不安と深い関係があります。ストレスや不安で、自律神経のバランスが崩れると、腸が知覚過敏になってしまうリスクが高くなります。
また、過敏性腸症候群は、また食生活など生活環境の乱れも原因となりえますが、特ストレスがかかる状況において、症状が悪くなることが知られています。
例えば、試験中や面接中、初めての人と会って話す、大切な会議など緊張するシーンで症状がでることが多いのです。
また、性格によっても発症リスクが異なります。真面目で几帳面な方、内向的な方、また、うつ傾向がある方などは発症リスクが高いようです。

さらに、最近、過敏性腸症候群に腸内細菌叢の乱れが関係している可能性があることも示唆されるようになってきました。

肌と腸との関係

過敏性腸症候群では無くても、便秘だと肌荒れしやすことがよく知られています。
実際、腸と皮膚に関しては、腸管免疫や腸内細菌叢が皮膚の機能に及ぼす影響に関する研究も進んでいます。

例えば、皮膚における水分保持や傷が治るために重要な役割を担う水輸送タンパク質「アクアポリン(AQP)という分子があります。
これは大腸にもありますが、下痢や便秘を抑えるという大切なはたらきがあります。
そして、このアクアポリンは腸内細菌の状態によよってその量が変わる可能性があることがわかってきたのです。
簡単に言えば、腸内細菌叢の状態が良くないと、アクアポリンがうまくはたらかずに、結果として皮膚の水分バランスが崩れ肌荒れや乾燥肌になる可能性があるのです。

つまり、肌に腸内細菌叢の状態が影響を与えるのです。

<参考記事>

腸が不調なら医療機関で受診を

過敏性腸症候群はセルフケアだけでは改善しないことも多く、その影響で肌荒れなどを起こしているなら、いくら良いエイジングケア化粧品でスキンケアを頑張っても改善しないことも多いです。
もし、過敏性腸症候群が疑われる場合は、胃腸科などのクリニックを受診することをおすすめします。
また、過敏性腸症候群ではなくても、他の腸の病気が隠れているかもしれませんので、なおさらです。

<参考記事>

過敏性腸症候群の治療

ここまでお話したとおり、過敏性腸症候群はストレスと関わりの深い病気です。
治療方法には、食事療法や運動療法、薬物療法、心理療法があります。
例えば、アルコールやタバコ、カフェインなどの嗜好品を取りすぎていないかなどをチェックして食生活の改善を指導されることがあります。
また、適度な運動はストレ軽減に有効なので、適度な運動も推奨されます。

薬物療法では整腸剤や高分子重合体、抗コリン剤、止瀉薬、漢方などが症状に応じて処方されます。心理療法ではカウンセリングをはじめ、症状に応じて心療内科や精神科での治療も行われます。

さらに、過敏性腸症候群の最新の治療方法として腸内フローラ治療を取り入れているクリニックもあります。

肌状態を整えるには、肌が良くない根本的な原因を取り除くことが大切です。
いくら良いエイジングケア化粧品でスキンケアを頑張っても今回のように過敏性腸症候群や腸内細菌叢が悪い影響あたえていては改善しません。
美肌を目指すエイジングケア世代の女性や腸を始め体全体の健康にも気を配りましょう。

ニキビと腸の状態の関係のエビデンス

便秘などで腸の状態が良くないとニキビや肌荒れになりやすいことは良く知られています。 実際に、ニキビと便秘の関係を研究した医学論文もたくさんあります。 例えば、13,000人以上の青少年を対象にした大規模な研究で、ニキビの患者が便秘、口臭、胃液逆流などの消化器系の問題を抱えていることが多いことがわかっています。 特に、中腹部の膨満感はニキビや脂漏性皮膚病との関連性が37%も高いこという結果がでています。(*1)

また、にきびの患者の約40%が便秘を経験があり、ニキビが無い人よりその比率が大きいといった研究もあります。(*2)

こうしたエビデンスからも、肌荒れやニキビが腸内環境と深く関わっていることは、まず間違いないと言えそうです。

そのため、ニキビや肌荒れに対して、症状を抑えるために皮膚科や美容皮膚科での治療やスキンケアでの対策も必要ですが、根本的な改善のためには同時に腸内環境の改善も大切です。

<参照論文>
(*1) Acne vulgaris, probiotics and the gut-brain-skin axis – back to the future?
(*2) The relationship between acne vulgaris and irritable bowel syndrome: A preliminary study

<参考記事>

セルフケアでできるIBSの改善法

高FODMAP食を控える

高FODMAP食とは、腸で発酵しやすく、吸収されにくい炭水化物(糖類)をよく含む食品のことを言います。
Fermentable(発酵性)、Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(2糖類)、Monosaccharides(単糖類)and Polyols(ポリオール:ソルビトール、マンニトール、キシリトール)の頭文字をとって「FODMAP」と表記されます。
高FODMAP食は、腸内でガスを産生し、腹部膨満感の原因となります。また、小腸で吸収されにくく、腸内の糖質濃度を高めます。そのため、水分が腸内に漏れて来やすくなり下痢や腹痛の原因になるのです。
高FODMAP食は、パン、ラーメン、うどん、パスタ、ピザ、牛乳、ケーキなどあります。また意外かもしれませんが、腸に良いと言われている納豆やヨーグルト、オリゴ糖も高FODMAP食です。

IBSではが悪影響を与えている可能性があります。
そのため、高FODMAP食を摂るのを減らすことで、IBSが改善することがあります。

<参考記事>

食物繊維を摂る

水溶性食物繊維である「難消化性デキストリン」や「イヌリン」などの食物繊維を摂ることで、便秘型のIBSの改善の可能性があります。
難消化性デキストリンは、ジャガイモやトウモロコシに含まれています。
また、イヌリンは、菊芋やごぼう、ニンニク、玉ねぎなどに含まれています。

一方、水に溶けずに水分を吸収してふくらむ不溶性食物繊維は、便のカサを増やして腸の働きを刺激します。さらに、乳酸菌やビフィズス菌といった体によい作用をもたらす善玉菌のエサとなり、菌を増やしておなかの調子を整えます。
不溶性食物繊維は、大豆やごぼう、ココアに含まれています。

<参考記事>

適度な運動

適度な運動は腸内環境の改善に効果的だと考えられています。
適度な運動は血流を促し、酸素や栄養が全身に届きやすくなります。そのため代謝がよくなり、腸の蠕動運動も活性化します。
また、腸粘膜には温度、圧、化学物質など様々な刺激に対する受容体があると考えられていますが、運動で物理的な刺激を与えることは腸の蠕動運動に良い影響を与えます。
ウォーキングやストレッチなど可能な範囲で運動習慣を身につけることはIBSの改善だけではなく、健康や美肌のためにおすすめです。

良質な睡眠

睡眠不足はストレスとなって自律神経の乱れにつながります。自律神経の乱れは、腸内環境に悪影響を与えます。
逆に、良質な睡眠はストレスを減らすとともに成長ホルモンをはじめとするホルモン分泌が増えることで、自律神経が整いIBSの症状の軽減や腸内環境の改善が期待できます。

最近の研究では、前夜、「よく眠れた」と感じた日には、過敏性腸症候群(IBS)患者の消化器症状が軽減する傾向があったという医学論文もあります。
良い睡眠が明らかにIBSを改善するかどうかは明確ではありませんが、良い睡眠が体の健康や肌に良い影響を与えることは間違いありません。

<参照論文>
(*3)Topan R, et al. Am J Gastroenterol. 2024;119:155-64.

<参考記事>

自分なりのストレス解消法を持つ

ストレスは脳によって感じる物であり腸の状態と深く関係しています。
ストレスを解消することはIBSにも肌にも良いことです。
好きな音楽を聴いたりアロマテラピーを取り入れる、趣味を楽しむなど自分なりのストレス解消法を身につけましょう。

<参考記事>

まとめ

なかじま胃腸クリニック 院長中嶋 仁先生から、IBS(過敏性腸症候群)と肌の関係、原因や治療法について解説していただきました。また、ナールスからはセルフケアでできる腸内環境の改善の方法をご紹介しました。
IBSに限らず今では便秘など腸の不健康な状態がニキビや肌荒れの原因になることがわかっています。
また、脳が感じるストレスも腸や肌に悪影響を与えます。
こうした問題がある場合は、エイジングケアだけでは解決しません。
腸の状態が良くないことが続く場合は、まずは消化器専門の病院やクリニックを早めに受診しましょう。
もし器質的な問題が無くIBSなら医師の指導に従って治療を続けるとともに腸内環境の改善のためにできるセルフケアにも取り組みましょう。

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