紫外線治療は、紫外線療法または光線療法とも呼ばれます。
尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎、尋常性白斑、円形脱毛症、痒疹などの皮膚の病気で、塗り薬だけでは改善しない場合に用いられる治療法です。
この記事では、紫外線治療とは何か、その種類や効果、方法、副作用などを幅広くご紹介します。
- 紫外線治療は、免疫抑制力を活用した治療法です。ステロイド外用薬などの塗り薬だけでは改善しない尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎の治療に活用されます。
- 紫外線治療は、光源ランプを用いて患部に直接紫外線を照射して治療します。照射回数や紫外線量は、病気の種類や重症度、個人の症状によって異なります。
- 紫外線治療の副作用として、日焼け、皮膚の赤み、色素沈着などがあります。また、長期的なリスクとして、慢性紫外線皮膚変性や皮膚がんなどがあります。
- 紫外線治療には、PUVA(プーバ)療法、ナローバンドUVB療法、エキシマライト、エキシマレーザーによる紫外線治療の4つがあります。また、それぞれに特徴があります。
- 紫外線療法を受ける場合は、皮膚科医などの専門家と十分に相談しましょう。また、治療中も適切なスキンケアを行いましょう。
京都大学農学部卒医薬品業界歴30年以上の専門家の執筆記事
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CONTENTS
1.紫外線治療とは?
紫外線治療とは、紫外線の持つ免疫を抑える力を利用して、乾癬やアトピー性皮膚炎、尋常性白斑などの皮膚の病気を治すための医療の1つです。
紫外線療法、光線療法とも呼ばれます。
乾癬やアトピー性皮膚炎などは、過剰な免疫反応を起こした場合、ステロイド外用薬などの塗り薬だけでは改善しないことがあります。
また、症状がひどくなったり、患部の面積が広くなる場合があります。
そんなときに、中波長紫外線(UVB)と長波長紫外線(UVA)によって、過剰な免疫反応を起こす細胞の増殖を抑え、皮膚病を治すのが紫外線治療です。
つまり、紫外線のデメリットである免疫を低下させるはたらきを上手に活用する治療法なのです。
この記事では、紫外線治療とは何か、その種類や効果、方法、副作用などを幅広くご紹介します。
また、治療を受けている際のスキンケアについても取り上げます。
「紫外線治療ってどんな治療法なの?教えて!」
「紫外線はどんな皮膚の病気に使うの?効果は?」
「紫外線治療の種類は?いくつかあるの?」
「紫外線治療の方法は?どんな機器を使うの?」
「紫外線治療は安全なの?副作用はあるの?」
などに興味がある方は、続きをチェックしてみてくださいね。
また、紫外線についての理解を深めることは、からだの健康やアンチエイジングとエイジングケアにも役立ちます。
そのためにもチェックしていただければ幸いです。
<参考記事>
紫外線による免疫低下は皮膚がんや感染症の原因になるリスクが!
2.紫外線治療は、どんな病気に使うの?
紫外線治療は、保険適応できる病気として乾癬(かんせん)、類乾癬、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、悪性リンパ腫(菌状息肉腫(症))、慢性苔癬状粃糠疹(まんせいたいせんじょうひこうしん)、尋常性白斑、アトピー性皮膚炎、また円形脱毛症があります。
1)乾癬
乾癬は、遺伝的素因と環境因子を背景にして免疫系が活性化された皮膚の病気です。
乾癬にはさまざまな種類がありますが、全体の約70〜80%が尋常性乾癬です。
尋常とは普通という意味で、「普通」「一般的な」という意味です。
盛り上がった赤い発疹ができ、そこに銀白色の鱗屑(フケのような垢)ができてポロポロとはがれ落ちます。
紫外線治療は、特に尋常性乾癬にはとても有用な治療法です。
この病気は、表皮が乾燥肌(ドライスキン)となって皮膚が赤く腫れ、ひび割れが起こります。
また、角質がはがれ落ち、ときにはかゆみをともなったり、ひどくなると出血することも。
そんな尋常性乾癬の症状を改善するために、紫外線療法は役立っているのです。
2)類乾癬
類乾癬とは、その名前のとおり乾癬と似た病気です。症状は、赤いまたは鱗屑をともなう小さな斑が皮膚にできるのが特徴です。通常、かゆみなどの自覚症状はありません。
乾癬と同じく、紫外線治療が適応されることがあります。
3)掌蹠膿疱症
掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に、膿をもった小さな水ぶくれが繰り返しできるかゆみがある皮膚炎です。ぬり薬を塗っても治らないことが多いため、紫外線治療が適応となります。
4)悪性リンパ腫(菌状息肉腫(症))
悪性リンパ腫は、白血球のうちリンパ球ががん化する病気です。悪性リンパ腫は、がん細胞の形態や性質によって、たくさんの種類があります。
菌状息肉症とは、皮膚に発生する悪性リンパ腫の一種です。
湿疹やアトピーとも間違われやすい皮膚の症状から発症し、数年から数十年という単位で徐々に長い時間をかけて進行する病気です。
初期には紫外線治療が高い効果を発揮します。
5)慢性苔癬状粃糠疹
慢性苔癬状粃糠疹は皮膚のリンパ球の病気です。
顔面を含むほぼ全身にかさぶたのつく、豆ぐらいの大きさまでの紅斑が多発します。 塗り薬や飲み薬はあまり効果がなく、紫外線治療での効果が期待できます。
6)尋常性白斑
尋常性白斑とは、表皮の基底層にあるメラノサイト(色素細胞)が何らかの原因で減少・消失する病気です。メラノサイトはメラニン色素を産生しますが、その減少、消失により皮膚の色が白く抜けていきます。
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7)アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、アトピー素因を持ち、
アトピー性皮膚炎とは、かゆみをともなった皮湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。
遺伝的にアトピー素因持ち、フィラグリンの異常などによって、セラミドが少なく皮膚のバリア機能が低下しているという特徴があります。
また、ホコリや食物、ダニなどのアレルゲン、精神的・肉体的ストレスなどが影響していると考えられます。
<参考記事>
8)円形脱毛症
円形脱毛症とは、突然、毛が抜けて円形や楕円形の脱毛斑が生じる疾患です。
頭部全体に広がるものや、眉毛やまつ毛、体毛などに及ぶ重度のものまで、その症状はさまざまです。単発型、多発型、前頭脱毛症、汎発性脱毛症に分類されます。痛みなどの苦痛をともなう症状はありません。
3.紫外線治療の進め方やリスク・副作用・注意点
1)紫外線治療の進め方
紫外線を選択して取り出せる光源ランプを用い、患部に直接紫外線を照射して治療します。
照射回数や紫外線量は、病気の種類や重症度によって違います。
また、人によっても反応が異なります。
そのため、最初に問診を行った上で、治療を始める前に背中に紫外線を当て、その反応を測定してから、治療に使う最初の紫外線量を決めます。
その後、少しずつ紫外線量を増やしていき、治療効果の高くなる安全な照射量を当てるよう調整していきます。
また、入院治療なら週4〜5回、外来治療なら週2〜3回(1回5〜7分)の照射が一般的で、いずれの場合も20回1クールが基本です。
2)紫外線治療のリスクや副作用は?
紫外線治療を行った際に、日焼け、皮膚の赤み、色素沈着などの副作用が起こることがあります。
また、長期的なリスクとして、慢性紫外線皮膚変性や皮膚がんなどがあります。
そんな長期的なリスクを避けるために、総照射量の上限を決めたり、より安全な治療法が選ばれます。
3)紫外線治療が受けられない方は?
紫外線治療を受けることができないのは、子供・妊婦・免疫抑制剤を使用中の方、皮膚がん・前がん病変のある方、光線過敏症の方、膠原病の方です。
また、心臓・脳などに障害がある方、医薬品を服用している方、化粧品・消毒剤などで皮膚がかぶれた経験(化粧品かぶれや接触皮膚炎)のある方は、事前に医師に相談しましょう。
なお、紫外線治療を受けられないことは、医学的には禁忌と呼びます。
4.紫外線治療にかかる費用は?
令和4年診療報酬点数表によると「長波紫外線療法又は中波紫外線療法は乾癬、類乾癬、掌蹠膿疱症、菌状息肉腫(症)、悪性リンパ腫、慢性苔癬状粃糠疹、尋常性白斑、アトピー性皮膚炎又は円形脱毛症に対して行った場合に限って算定する。」と記載されています。
これらの疾患の場合は、健康保険が適応となるのです。
紫外線治療にかかる費用は、保険適応の場合、初診・再診かによって異なります。
治療薬の費用を別として、診察料・処方箋料の合計は、3割負担の場合で1回¥1,000程度です。
(そのほかに初・再診料、投薬料などがかかります。)
※再診の方:1,250円~2,220円
5.紫外線治療に使う機器の種類
紫外線治療には、使用する機器によって大きく4つの種類があります。
PUVA(プーバ)療法、ナローバンドUVB療法、エキシマライト、エキシマレーザーによる紫外線治療です。
それぞれの特徴をご紹介します。
1)PUVA療法
長波長の紫外線UVA(320~380nm)を用いる紫外線療法です。
光に対する感受性を高める薬剤(ソラレン)を飲んだり、塗ったりしてから照射します。
従来から、乾癬治療のひとつとして確立されていた紫外線療法です。
2)ナローバンドUVB療法
UVB療法とは、中波長紫外線UVB(290-320nm)を皮膚に当てる治療法です。
しかし、治療に必要な波長はもっと狭い(304-313nm)領域であることがわかりました。
また、日焼けを起こしたり、皮膚がんを誘発するなどの有害な波長は280-300nmであることもわかりました。
そこで、UVBのうち、311nmの波長を選択して当てることで、副作用を少なくして、かつ効果的に治療が行える方法として登場したのが、ナローバンドUVB療法です。
ナローバンドUVB療法は、薬をつけたり、飲んだりする手間がなく、簡便で、照射時間が短いというメリットもあります。
また、一度に全身を照射できるものから、部分的に照射できるものまでさまざまです。
効果もPUVA療法に劣らないことから、急速に普及しました。
今では、紫外線治療の主流となっています。
3)エキシマライトによる紫外線治療
ナローバンドUVBが普及すると、より副作用の少ない治療が求められるようになってきました。
つまり、健康な皮膚には紫外線を当てずに、患部に絞って照射できる治療法が期待されるようになったのです。
それを実現したのが、エキシマライトです。
エキシマライトは、ナローバンドUVBに比べ、輝度(光強度)が高く、照射時間が短いのがメリットです。
波長308nmのエキシマライトを照射するVTRAC(ヴィトラック)という名称の機器などがあります。
いずれの紫外線療法も皮膚科医などと十分に相談して、治療を受けるかどうかを検討してください。
なお、最近では小型紫外線治療器(ナローバンドUVB治療器)の在宅光線療法への適応に関する臨床研究も始まっています。
4)エキシマレーザーによる紫外線治療
エキシマレーザーとは、エキシマライトと同じ308nmのUVBを照射するレーザーです。
エキシマレーザーは、一つの波長だけでできていて、エキシマライトと異なり、ほとんど広がらずにまっすぐに進む光を出すことがメリットです。
そのため、エキシマライトよりも輝度が高い光を照射することができます。
海外では20年以上の実績がありますが、日本では2018年12月に薬事承認を取得、2019年9月に保険収載され、紫外線治療に適用されるようになりました。
6.紫外線治療を受けている間のスキンケア
紫外線治療ほか、皮膚の病気の治療を受けている間は、主治医の指示にしたがって、日常生活やスキンケアにも注意を払いましょう。
紫外線療法を受けた日や翌日は、紫外線に当たらないようにすることが基本です。
また、患部以外は日焼け止めを使って紫外線対策を行うことが必要な場合もあります。
さらに、必要に応じて、白色ワセリンなどの保湿剤も使用します。
ご自分で行うスキンケアは、清潔を保つとともにしっかり保湿ケアを行いましょう。
洗体はしっとりタイプの洗浄剤を使って、擦りすぎないように泡で優しく洗うことが大切です。
お風呂は乾燥肌や敏感肌と同じように考えましょう。
42℃以上の熱いお風呂や15分以上の長い入浴は控えましょう。
7.紫外線治療に関するよくある質問
Q1.紫外線治療には後遺症はありますか?
後遺症というより紫外線療法には副作用があります。
紫外線治療を行った後、短期的に皮膚の赤みやほてり、水疱などの症状が出ることがあります。
また、長く治療を続けると、皮膚の慢性障害を起こすリスクがあります。
医療機関では、効果とリスクのバランスを考えて、紫外線治療の継続の可否を検討します。
なお、副作用が強い場合は、抗炎症効果のある成分などを配合した軟膏治療を行うこともあります。
Q2.紫外線療法の施術方法
治療前に紫外線に対する感受性を調べます。また、使えない方(禁忌)ではないかを確認します。紫外線治療が適応となる場合、効果・副作用のバランスを考えて、使う機器や照射量を決めて治療を行います。
治療では痛みはまったくありません。
照射後、保湿剤やなどの外用薬を併用します。
病気の種類や重症度で異なりますが、週1~2回照射します。
治療効果は、3~10回目の照射で実感することが多いです。
Q3.手荒れは紫外線治療で治りますか?
重症の手荒れの場合で、保湿剤などで治らないケースに紫外線治療を行うことがあります。重症の手荒れは、アレルギー反応が関係している可能性があります。その場合、過剰な免疫を抑制する紫外線治療は有効です。
保険適応かどうかは診断によるので、クリニックで相談しましょう。
<参考記事>
Q4.紫外線療法の注意点は?
紫外線治療を受けている間に最も注意すべきことは、日焼けを避けることです。治療中は特に意識して紫外線対策を行いましょう。日焼け止めをはじめ日傘、衣類、帽子など治療部位へ紫外線が当たるのを避けるようにしましょう。
また、副作用がでたら主治医に相談しましょう。
Q5.紫外線治療はどの診療科で受けることができますか?
紫外線治療は、主に皮膚科で受けることが可能です。
ただし、すべての皮膚科で受けられるとは限りませんし、形成外科やほかの診療科でも受けることができる場合があります。
紫外線治療を検討している場合は、受診前に問い合わせて確認しましょう。
8.まとめ
紫外線治療とは何か、その種類や効果、方法、副作用などを幅広くご紹介しました。
いかがだったでしょうか?
悪者扱いされることの多い紫外線も、その特性を利用して尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎などの完治が難しい皮膚病の治療に使われるのです。
また、診断によっては保険適応が可能で、最近では治療に使う機器も増えています。
この記事「紫外線治療とは?アトピー性皮膚炎など皮膚の病気に有効な光線療法」が、難治性の皮膚の病気で悩む方のお役に立てば幸いです。
著者・編集者・校正者情報
(執筆:株式会社ディープインパクト 代表取締役 富本充昭)
京都大学農学部を卒業後、製薬企業に7年間勤務の後、医学出版社、医学系広告代理店勤務の後、現職に至る。
医薬品の開発支援業務、医学系学会の取材や記事執筆、医薬品マーケティング関連のセミナー講師などを行う。
一般社団法人化粧品成分検定協会認定化粧品成分上級スペシャリスト
著作(共著)
(編集・校正:エイジングケアアカデミー編集部 若森収子)
大学卒業後、アパレルの販促を経験した後、マーケティングデベロッパーに入社。
ナールスブランドのエイジングケア化粧品には、開発段階から携わり、最も古い愛用者の一人。
当社スタッフの本業は、医学・薬学関連の事業のため、日々、医学論文や医学会の発表などの最新情報に触れています。
そんな中で、「これは!」という、みなさまの健康づくりのご参考になるような情報ご紹介したり、その時期に合ったスキンケアやエイジングケアのお役立ち情報をメールでコンパクトにお届けしています。
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