「美肌に良い食べ物は、実は脳の健康にも良い」——そんな驚きの可能性を示す研究結果が、2022年、権威ある医学雑誌「Neurology」に発表されました。
ケールやほうれん草などの緑の葉野菜、オレンジやパパイヤといった色鮮やかな果物には、抗酸化成分が豊富に含まれています。これらの成分が紫外線ダメージから肌を守ることはよく知られていますが、同時に脳細胞を酸化ストレスから守り、認知症の発症リスクを下げる働きも期待できることが、大規模な追跡調査から示されました。
日々の食事に意識的に野菜や果物を取り入れることが、美肌ケアと認知症予防を同時に叶える最も手軽な習慣かもしれません。最新研究の内容とともに、今すぐ実践できる食べ物の選び方をご紹介します。
| 監修・編集責任者コメント |
ナールスエイジングケアアカデミー・美容医療アカデミー 編集長 富本充昭 美容と健康の情報発信に携わる立場として、私自身も日々の食事をとても重視しています。特に意識しているのがケールなどの葉野菜で、ジュースで摂るなど無理なく続ける工夫をしています。こうした習慣は「特別な対策」というより、日常の積み重ねとして取り入れることが大切です。研究結果を知識として理解するだけでなく、自分の生活に落とし込める形で実践することが、長期的な肌や健康の維持につながります。完璧を目指すより、続けられる小さな習慣を持つことが何より重要だと感じています。 |
美肌と脳の健康に共通する「抗酸化」という鍵

1)肌と脳の老化は同じしくみから始まる
私たちの体の中では、毎日大量の活性酸素が生まれています。活性酸素は細菌やウイルスと戦う免疫機能を担う一方で、過剰になると細胞を傷つける「酸化ストレス」を引き起こします。
この酸化ストレスこそが、シミ・シワ・くすみといった肌の老化と、神経細胞の変性・破壊による認知症の、共通の引き金になると考えられています。「肌が老ける」と「脳が老ける」は、細胞レベルで同じメカニズムを共有しているのです。
2)抗酸化成分とは?カロテノイド・ビタミン類の役割
抗酸化成分とは、活性酸素を無害化し、酸化ストレスを抑える働きをもつ栄養素です。代表的なものとして以下が挙げられます。
- カロテノイド類(ルテイン、ゼアキサンチン、βクリプトキサンチンなど)
- ビタミンC:コラーゲン生成促進、免疫強化
- ビタミンE:細胞膜の脂質酸化を防ぐ
- ビタミンA:皮膚・粘膜を正常に保つ
これらを食事から継続的に摂取することが、肌と脳の両方の健康維持に寄与すると考えられています。
【参考記事】
お肌の酸化は老化の大敵!防ぐための対策とエイジングケア
注目の論文紹介:米国立老化研究所(NIA)の大規模研究

1)研究の基本情報
2022年5月4日、医学雑誌「Neurology」に、米国立老化研究所(NIA)による大規模追跡研究の結果が発表されました。以下の表に研究の概要をまとめます。
| 項目 | 内容 |
| 発表媒体 | 医学雑誌「Neurology」(2022年5月4日) |
| 実施機関 | 米国立老化研究所(NIA) |
| 対象 | 45〜90歳の男女7,283人 |
| 追跡期間 | 平均16〜17年(最長26年) |
| 測定項目 | 血液中のビタミンA・C・E、カロテノイド類の血中濃度 |
| 研究結果① | ルテイン・ゼアキサンチンの血中濃度が高いグループは認知症発症リスクが有意に低かった |
| 研究結果② | βクリプトキサンチンの血中濃度が高いほど認知症リスクが14%低下 |
| 出典(PubMed) | https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35508396/ |
2)研究方法
45〜90歳の男女7,283人を対象に、血液中のビタミンA・C・E、およびカロテノイド類の血中濃度を測定。抗酸化物質の測定値を「高グループ」「中グループ」「低グループ」の3つに分類し、平均16〜17年(最長26年)の追跡期間を通じて、認知症の発症との関係を詳細に解析しました。
3)主な研究結果
長期追跡の結果、以下の重要な知見が得られました。
- ルテインおよびゼアキサンチンの血中濃度が高いグループでは、低いグループと比較して、認知症の発症リスクが有意に低いことが示されました。
- βクリプトキサンチンの血中濃度が高いほど、認知症の発症リスクが14%低下することが明らかになりました。
つまり、血液中にルテイン・ゼアキサンチン・βクリプトキサンチンという3種類の抗酸化物質を多く含む人ほど、認知症になりにくい可能性が示されたのです。
4)研究の限界と今後の課題
一方で、研究者たちは次の点についても慎重な見解を示しています。
- 教育・収入・身体活動量などの生活習慣因子を考慮すると、抗酸化物質の影響は小さくなった。
- 血液検査のデータのみに基づく研究であり、生涯にわたる抗酸化物質の摂取量や血中濃度の変化を反映したものではない。
- この研究だけでは根拠として不十分であり、より広範かつ長期的な研究が必要とされる。
したがって、「食べ物が認知症を完全に予防する」と断言できる段階ではありませんが、積極的に抗酸化成分を摂取することは、健康全般への恩恵が多く期待できます。
注目成分を多く含む「美肌&脳活」食材ガイド

1)研究で注目された3つの抗酸化成分と食材
| 成分 | 主な食材 | 美肌効果 | 認知症予防への期待 |
| ルテイン・ゼアキサンチン | ケール、ほうれん草、 ブロッコリー、エンドウ豆 | 抗酸化・くすみ防止・ シミ予防 | 認知症リスク低減 |
| βクリプトキサンチン | オレンジ、パパイヤ、柿 | 紫外線ダメージ軽減・ 美白効果 | リスク14%低下 |
| ビタミンC | ピーマン、ブロッコリー、 キウイフルーツ | コラーゲン生成促進・ 美白ケア | 神経細胞保護・ 抗酸化作用 |
| ビタミンE | アーモンド、アボカド、 ひまわり油 | 細胞膜保護・ 老化防止 | 脳細胞の酸化防止 |
2)ルテイン・ゼアキサンチン:緑の葉野菜に豊富
ルテインとゼアキサンチンは、緑色の葉野菜に特に多く含まれるカロテノイド系色素です。ケール・ほうれん草・ブロッコリー・エンドウ豆などが代表的な食材で、これらは美肌効果(抗酸化・くすみ防止)でも広く知られています。油と一緒に摂ることで吸収率が大幅に高まるため、オリーブオイルで炒めたり、ドレッシングをかけたりして食べるのがおすすめです。
3)βクリプトキサンチン:オレンジ色の果物に注目
βクリプトキサンチンはオレンジ・パパイヤ・柿などのオレンジ色の果物に豊富に含まれます。今回の研究では、この成分の血中濃度が高いほど認知症リスクが14%低下するという特に注目すべき結果が示されました。夏はパパイヤやオレンジジュースで手軽に摂取できます。
4)今日から実践できる食事のポイント
- 1日1食は緑の葉野菜(ほうれん草・ケール・ブロッコリーなど)を取り入れる
- おやつや朝食にオレンジ・キウイ・パパイヤなどの色鮮やかな果物を加える
- カロテノイドは脂溶性のため、良質な油(オリーブオイルなど)と組み合わせる
- サプリメントでの補完も可能だが、食材から摂ることを基本に
- 1種類の食材に偏らず、さまざまな色の野菜・果物をバランスよく摂ることが重要
【参考記事】
美肌をもたらす食べ物と飲み物は?その種類から栄養素まで
野菜の食べ方で美肌に差がつく!?エイジングケアによい野菜
フルーツで美肌になる!栄養素と美容効果と食べ方
美肌ケアと認知症予防を同時に叶える習慣づくり

1)食事・運動・スキンケアを組み合わせた総合的エイジングケア
認知症予防において、食事だけが唯一の手段ではありません。定期的な有酸素運動(ウォーキングなど)や十分な睡眠、社会的なつながりを保つことも、脳の健康維持に不可欠とされています。また、肌の酸化ダメージを防ぐ抗酸化スキンケアも、外からのエイジングケアとして重要です。
食事で内側から抗酸化成分を補い、スキンケアで外側から肌を守り、適度な運動で全身の血行を促進する——この3つを組み合わせることで、美肌と脳の健康を同時に守る「トータルエイジングケア」が実践できます。
2)今日から始める「美肌×脳活」1週間プラン
- 月曜:ほうれん草のオリーブオイル炒め+オレンジ1個
- 火曜:ブロッコリーのサラダ+パパイヤスムージー
- 水曜:ケールと豆腐の味噌汁+柿(旬の時期)
- 木曜:30分ウォーキング+緑黄色野菜のスープ
- 金曜:アーモンドとキウイのデザート
- 土曜:彩り野菜たっぷりの炒め物
- 日曜:ゆっくり休養+翌週の食材を買い揃える
| 執筆者コメント |
ナールスコム店長 村上清美 「体にいいと分かっていても、毎日きちんと食べるのは大変…」と感じる方も多いのではないでしょうか。私も忙しい日は野菜が不足しがちですが、そんな時はカット野菜や冷凍フルーツを活用して、できる範囲で続けることを大切にしています。美容も健康も、一度に変えようとすると負担になりますが、“昨日より少し良くする”意識なら無理なく続けられます。食事は自分をいたわる時間でもあります。完璧を目指さず、生活に合った形で少しずつ取り入れていきましょう。毎日の小さな積み重ねが、未来の肌と健康を支えてくれます。 |
よくある質問(FAQ)
Q1. ルテインやβクリプトキサンチンはサプリメントで摂っても同じ効果がありますか?
サプリメントでもある程度の補完は可能ですが、食材から摂ることを基本にすることが推奨されています。野菜や果物には抗酸化成分だけでなく、食物繊維・ミネラル・フィトケミカルなど多くの栄養素が含まれており、それらが相乗的に働くことで健康効果が高まると考えられています。サプリメントはあくまで補助的な手段として位置づけましょう。
Q2. どれくらいの量を食べればよいですか?具体的な目安はありますか?
今回の研究は「血中濃度」を指標としており、食事量の具体的な基準は示されていません。ただし、厚生労働省が推奨する「1日350g以上の野菜摂取」を目安に、緑黄色野菜をその半分(約170g以上)摂ることを心がけると良いでしょう。果物については1日200g程度が一般的な目安です。
Q3. 認知症を完全に予防することはできますか?
現時点では、特定の食べ物や生活習慣によって認知症を「完全に予防できる」とは言い切れません。今回の研究でも、生活習慣因子を考慮すると抗酸化物質の効果は小さくなることが示されています。ただし、食事・運動・睡眠・社会的交流などの複合的な健康習慣が認知症リスクを下げる可能性があるとする研究は多く、日々の積み重ねが大切です。
Q4. 子どもや若い世代が食べることにも意味がありますか?
はい、意味があります。抗酸化成分は年齢を問わず酸化ストレスを抑える働きをし、将来の認知症リスク低減につながる可能性があります。また、若いうちから野菜・果物を積極的に食べる習慣を身につけることで、生涯を通じた健康維持にもつながります。
Q5. 男性と女性で効果に違いはありますか?
今回の研究では男女合わせた7,283人を対象としており、性別による差については明確には言及されていません。一般的に、ホルモンバランスや体脂肪率の違いから、カロテノイドの吸収率や体内での利用のされ方に若干の差がある可能性はありますが、どちらの性別においても積極的に抗酸化食品を摂ることは有益です。
まとめ
今回ご紹介した米国立老化研究所の研究は、美肌に良い食べ物が脳の健康にも寄与する可能性を示した、非常に示唆に富む研究報告です。
- ルテイン・ゼアキサンチン(緑の葉野菜)やβクリプトキサンチン(オレンジ色の果物)が、認知症リスクを下げる可能性がある。
- βクリプトキサンチンの血中濃度が高い人は、認知症リスクが14%低いという結果が示された。
- ただし、生活習慣因子の影響も大きく、食事だけで認知症を完全に防げるわけではない。
- 食事・運動・スキンケアを組み合わせた総合的なエイジングケアが理想的。
日々の1食1食の積み重ねが、10年後・20年後の美肌と脳の健康を守ることにつながります。今日の食事から、緑の葉野菜や色鮮やかな果物を1品追加してみましょう。
参照論文
PMID: 35508396 PMCID: PMC9169941 DOI: 10.1212/WNL.0000000000200289
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